マンガ家・作家と編集者の関係性について|ダメ出しの正しい受け止め方とは

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マンガ家や小説家になるうえで「編集者との良い関係」は不可欠です。編集者に作品を酷評され、挫折しちゃう人もいると思います。もしかしたら編集者の意見を「そのまま」受け止めすぎているのかもしれません。編集者の意見の受け止め方、関係性の持ち方について考えます。



編集者の意見を聞きすぎるリスクとは

編集者の意見を聞くことは、自分のマンガや小説を客観的に見ることに役立ち、成長するために大切であることは言うまでもありません。とはいえ、それを素直に聞きすぎることにはリスクがあります。

クリエイター思考が失われるリスク

何事も「やりすぎ」は禁物です。あまりに編集者の意見に左右され、「批判的な思考」が強くなってしまうと、「クリエイター思考」が弱くなるリスクがあります。

いくら直しても、いくらアイデアを出しても、自分の作品がつまらなく思えてきて、「スランプ」に陥るリスクがあるのです。

ではこの「クリエイター思考」とは何でしょうか。

クリエイター思考とは

クリエイター思考に大切なのは、「今描いている、このマンガは最高に面白いんだ!」「この小説は傑作だ!」という根拠のない自信です。

その点について、『うしおととら』などで有名なマンガ家・藤田和日郎は、NHK「浦沢直樹の漫勉」で、以下のようにコメントしています。

ちょっと「自分に酔う」というか「その世界観に酔う」みたいな部分がなければ、マンガなんて…かっこいいマンガ描けないと思いますもん。(中略)テンション上げていかないと。テンションこそが、毎週マンガを描いていくエネルギーなんですよね。…カラ元気ともいいますけどね。

出典:NHK浦沢直樹の漫勉「藤田和日郎」より。藤田和日郎氏のコメント

NHK浦沢直樹の漫勉「藤田和日郎」

自分に酔う」というのは恐らく、自分の作品の面白さを、根拠もなく信じている状態でしょうね。

編集者目線で、冷静な目で作品を分析することも重要ですが、それが強くなりすぎるとクリエイティブなことはできなくなる。自分の作品に批判的すぎると、どんどん描けなくなっていく。

そういう意味で「テンション上げていかないと」と言っているのでしょう。編集者のコメントを、そのまま受け止めすぎて、クリエイターに不可欠な、「テンション」を失わないようにしたいものですね。

編集者のダメ出しをどう受け止めるか

クリエイターとしての「テンション」を維持するために、編集者のコメントをどのように受け止めればいいのでしょうか?

取捨選択して受け止める

編集者の意見を「完全無視」するのもやりすぎですし、「言いなり」になるのもよくない。つまり、ちょうどよく受け止める必要があります。

つまり、基本的に「部分スルー」で受け止めるわけです。

それについて『ジョジョの奇妙な冒険』などで有名なマンガ家・荒木飛呂彦の著書『荒木飛呂彦の漫画術』に、以下のようなくだりがあります。

どんなものであっても、編集者の意見を漫画家は大切にした方がいいと思います。もし言われたことに納得できないときは、額面通りに受け止めるのではなく、その裏に秘められている真実は何かを考えなければいけません。

出典:荒木飛呂彦著「荒木飛呂彦の漫画術」(集英社)

荒木飛呂彦著「荒木飛呂彦の漫画術」(集英社)

その裏に秘められている真実は何かを考えなければいけません」というのが、すごく深いと思います。

その具体例と思われる話が、同じ本に書かれています。以下のとおりです。

僕自身もデビューしてしばらくの間、ヒットに恵まれなかった時期、編集者から様々なアドバイスをされたのですが、その言葉を額面通りに受け取るのではなく、要するに絵が問題なのだろう、と考えていました。

出典:荒木飛呂彦著「荒木飛呂彦の漫画術」(集英社)

そして見事、絵を改善した荒木飛呂彦は、ヒット作を生み出すわけです。

この事例では、編集者も何を改善すればいいのか分かっていなかったんでしょうね。

「そこが下手」「ここがダメ」「ここを直せ」といろいろ言われたけども、アドバイスの内容が納得できない。

そこで、ひとまずアドバイスの内容はスルーして、「何かがダメなんだ」ということだけは受け止めた。そして改善方法は自分で考えた。

その結果、絵を改善すればいいという結論になったということでしょう。これが前述の、「裏に秘められている真実は何かを考える」ということだと思います。

編集者がうまく言い表せない違和感は何なのかを、代わりに考えてあげる感じですね。

「漠然としていてよく分からないアドバイス」など、納得できない評価をもらったときは、こうやってスルーしつつ受け止める。もちろん、的確なアドバイスは正面から受け止める。

こうやって「取捨選択」して受け止めるのが適切だといえるでしょう。

面白さを評価されていると考えない

編集者から評価を受けると、「作品の面白さを評価されている」と思ってしまいがちだと思います。「編集者は自分の好みを押し付けてくる」と感じる場合がそうですね。

でも編集者は、「うちの雑誌に載せるには、ココを直してほしい」「うちで出版するには、ここを修正してください」と言っているだけです。

「こうすれば面白くなる」と言われていると思うと反発したくなりますが、「こうすればうちの雑誌に載せられます」と言っているだけだと考えれば、そもそも反発する意味がないことに気が付くはずです。

その雑誌の方針に会わせるのが嫌なら、他を当たればいいだけでしょう。「なんだ、その程度の雑誌だったのか」ぐらいの、上から目線で受けとめちゃっていいかもしれません。

もちろん前述のように、何か修正のヒントになる良いことを言われることもあるでしょう。とはいえ、特に役に立たないアドバイスを無理に受け止める必要はないはずです。

この雑誌には合わなかった。…じゃあ他の雑誌とか、他の方法で発表すればいい!」というスタンスが基本でしょうね。



まとめ

マンガ家・作家が、編集者の意見を受け止める際に大切なポイントは、以下の2点です。

  • マンガを描くには、理屈無視のハイテンションが必要
  • 編集者のコメントを鵜呑みにしすぎると、そのテンションを失うので、注意すべき

今回の参考作品

浦沢直樹の漫勉 藤田和日郎 [Blu-ray]

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)