写真をPCで加工して、マンガの背景にする場合、まず輪郭線(線画)を抽出する必要がありますね。「CLIP STUDIO PAINT」(クリップ・スタジオ・ペイント)の「ライン抽出」機能を使うと、それが簡単です。この記事では、クリップ・スタジオを使って、写真から線画を抽出する方法をまとめています。
目次
トレースは古い?輪郭線は自動で描ける!
写真を使って絵を描くといえば、昔は写真を上からなぞって「トレース」するというテクニックがありました。
デジタルが発達した今では、時間のかかる「トレース」をやっている人はあまりいないでしょう。トレースのメインである「輪郭線をなぞる」というのは、画像ソフトで自動的にできてしまうからです。
輪郭線を抽出できるソフトは「Photoshop」か「CLIP STUDIO PAINT」の2つが主流です。「Photoshop」は一般的な画像ソフトなのでトーンを貼ったりするのが大変ですから、白黒マンガ用なら「CLIP STUDIO PAINT」の方が便利です。
CLIP STUDIO PAINT を使えば、以下の写真から、右側のような輪郭線を抽出するのが簡単にできちゃいます。
ちなみに、CLIP STUDIO PAINT は、2種類のグレードがありますが、「ライン抽出」は上位モデルの「EX」にしかありません。
輪郭線抽出の大まかな流れ
詳しい操作方法を説明する前に、大まかな作業の流れをまとめておきます。以下の写真を加工します。
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1「ライン抽出」ボタンをクリック
クリップスタジオでは、「ライン抽出」ボタンをクリックするだけで、すぐに線画を抽出してくれます。
ただし、最初の状態ではちょっとゴチャゴチャしています。以下のとおりです。
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2線の量・太さを調整
線の量を減らしたり、太さを調整して、ゴチャゴチャした感じを解消していきます。少しの数値を入力するだけの簡単な操作です。
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3ベタ塗り部分を調整
一般的に、白黒マンガのペン入れは、輪郭線+影の部分のベタ塗りで成り立っていますね。1つの数値を入力するだけで、簡単にベタ塗りができます。
線画はこれで完成!マンガを描くためのソフトですから、気に食わない部分があれば、消しゴムやペン入れで修正するのも簡単です。
トーンの追加も簡単
線画の話からそれますが、次に「LT変換を実行」というボタンをクリックするだけで、トーンを自動で貼ってくれます。以下のような感じです。
「LT変換」について詳しくは、以下の記事にまとめています。
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「CLIP STUDIO PAINT EX」(クリスタEX)で写真を白黒マンガの背景に加工する方法
最近は、写真をもとにした背景を描いているマンガが多いですね。通称「クリスタ」の上位モデル「EX」を使うと、写真を背景する ...
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手順1:線画抽出ボタンをクリック
ここから具体的な操作方法です。
線画を抽出したいレイヤーを選択して、画面右端のあたりにある「レイヤープロパティ」の「ライン抽出」のボタンをクリックします。以下の赤矢印の部分です。
すると、以下のように表示が変わります。
ここに表示された数値を調整するだけで完了です。以下、説明していきます。
手順2:線の量・太さを調整
表現色を「モノクロ」にする
デフォルトだと「表現色」が「カラー」になっていますが、印刷対応のマンガにするためには「モノクロ」にします。
プルダウンをクリックして「モノクロ」を選択するだけです。
抽出方向
4つの矢印が並んでいるのが「抽出方向」の設定です。まずこれを設定すると、その他の設定もしやすくなると思います。
矢印マークをクリックすると、矢印が消えます。消した矢印の方向の輪郭線が薄くなります。「方向」の考え方を知るために、以下の図の線画を抽出してみます。
全ての方向の矢印がONの場合は、以下のように、太さが均一の線が抽出されます。

ライン抽出結果1(全ての方向がON)
「左方向」と「下方向」の矢印だけをONにした場合は以下のようになります。左と下のライン以外は細くなっていますね。均一に抽出するよりも立体感があると思います。

ライン抽出結果2(左方向と下方向だけがON)
ただ、どの境界線が細くなるかは、色の条件によって異なります。例えば以下のように、色の組み合わせを逆にしてみます。
先ほどと同じように「左方向」と「下方向」の矢印だけをONにすると、以下のように、先ほどとは逆方向の線が細く抽出されます。

ライン抽出結果3(左方向と下方向だけがON)
詳しい条件は公開されていないので、色々な矢印の組み合わせを試してみて、プレビューを見ながら判断するしかないと思います。
立体感を出すためには「上下どちらか」と「左右どちらか」の、2つずつの組み合わせがおすすめです。以下の図は、先ほどの写真で、全ての抽出方向がONの状態です。かなりゴチャゴチャしていますね。
スッキリさせるために、今回は「左方向」と「下方向」だけをONにしてみます。すると、以下のように、線に強弱がついて、ゴチャゴチャ感が解消されましたね。
「色の閾値」を調整
表現色の左側にある「+」マークをクリックします。以下の赤矢印の部分です。
クリックすると、以下の項目が表示されます。
2つの数値のうち、使いやすいのは「色の閾値」だと思います。数値が大きいほど、線が細かくなります。
先ほどの「抽出方向」の設定で「ちょっと線が消えすぎたかな?」と思ったら大きくするといいでしょう。この数値を少なくしすぎると、線がスッキリするというより、かすれた感じになるので注意が必要です。
今回はデフォルトの「128」のままにしました。
手順3:ベタ塗り部分を調整
「黒ベタ閾値」を調整するだけで、ベタ塗りの範囲が指定できます。数値が大きいほど、広範囲にベタ塗りされます。「どの程度の暗さの色までを黒く塗りつぶすか」という数値を指定するわけです。
ここまではデフォルトのままの「15」でしたが「117」にすると、以下のようになります。
黒すぎるかな?と思うくらいでも、トーンを貼るといい感じになることが多いです。黒っぽくしたほうが、変な線が消えて、手描き感がアップすると思います。
これで線画は完成です!
トーンも自動生成してくれる
線画の話ではありませんが、レイヤープロパティの「レイヤーのLT変換を実行」をクリックすると、簡単にトーンを貼ることができます。
これも少しの数値を調整するだけの簡単な操作です。詳しくは以下の記事にまとめています。
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LT変換をすると以下のような感じになります。
「LT変換」機能があるのは前述のとおり、クリスタEXだけです。