ルパンじゃない?『カリオストロの城』でルパンのキャラが違う理由とは

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『ルパン三世 カリオストロの城』は、言うまでもない大人気映画ですが、アンチ意見がないわけではありません。代表的なアンチ意見が「ルパンのキャラが違う」というものでしょう。それはなぜなのか?ということについて、参考資料を元にまとめました。



『カリオストロの城』のルパンはキャラが違う?

まず、ルパンのキャラが違うというのは、具体的にどの部分のことを指すのかを押さえておきましょう。

偽札を捨てる

まずは冒頭、カジノから盗んできた偽札を大量にまき散らして捨てる場面があります。

ルパンのキャラ設定からすると、偽金だろうが大喜びでもらうのが正解のように思えるかもしれません。

偽金とはいえ、カジノで流通していた「使えるお金」です。ドロボウとして、そこはもらっておくのが、キャラ設定に合っているように感じるでしょう。

クラリスをハグしない

そして劇中のルパンは、まるで少年マンガのヒーローのようで、大人向けマンガのハードボイルドな原作ルパンとは、全く違うように感じる人が多いでしょう。

そして最後は、クラリスに抱き付かれても、自らを制してハグしない場面が描かれます。ルパン本来のスケベな性格からすると、ありえない行動で、キャラが違うように見えるというわけです。

なぜルパンのキャラを変えたのか

宮崎駿は、ルパンの「TVアニメ第1シーズン」から作品に大きく関わっていますから、カリオストロの城で初めてルパンを作ったわけではありません。つまりルパンのアニメの原点を作った人物の一人でもあります。

ですから原作のことは十分知ったうえで、「あえて」ルパンのキャラを変えたはずです。どんな理由があってルパンのキャラを変えたのか、参考資料から探ってみましょう。

時代に合わせて変える必要があった

一つ目の理由は、「原作のルパンでは時代に合わない」という判断がなされたという点です。

宮崎駿は、ルパンのTVアニメ第1シーズンの途中から参加しましたが、その時もルパンのキャラを変えたというのは有名な話です。その点について本人が以下のように書いています。

旧ルパンの路線の変更は、スタッフのあずかり知らぬところから強要されたものだったが、演出を入れ替わるハメになったぼくら(高畑勲と私)は、まず何より”シラケ”を払拭したかった。

――『あれから4年…クラリス回想』アニメージュ編集部編 より

「シラケ」とありますが、これが第1シーズンの前半のルパンのキャラ像、つまり原作に近いキャラ設定ということですね。ルパンは元々「シラケ」キャラだったということです。

「シラケ」とはつまり、ご先祖のルパン一世から受け継いだ資産が沢山ありすぎて、お金や物はもういらないけど、単に退屈を紛らわすためにドロボウをやっているというキャラです。

そういうキャラを変えたかった。つまり宮崎駿としては、「今の時代、もう原作のルパンみたいな話をやってもダメだ!」と考えたわけですね。その点は、車が高級車の「ベンツSSK」から、大衆車の「フィアット500」へ変更されたことにも表現されています。

つまり原作からのキャラ変更は、カリオストロの城からではなく、TVアニメ第1シーズンから既に行われていたということです。

実は原作よりずっと未来の話である

実はカリオストロの城は、ルパンの原作やTVアニメ第1シーズンよりも「ずっと未来の話」であるという説があります。つまり、ルパンが年を取って、中年の「おじさま」になったことが、キャラが変わった理由として考えられるのです。

それは、宮崎駿の以下のコメントから推測できます。

ルパンの世界より、現実の世界の方が、はるかに騒がしくなってしまったのだ。

(中略)

現実の世界に取り残されたルパンに、いったい何ができるのだろう。せいぜい少女の心を盗むくらいしか残されていない……。

(中略)

あのころのハングリーなルパン、助平でケッペキで、オッチョコチョイに思慮をかくし、ミニカーレースに夢中になれたルパンを、ぼくはときどきなつかしく思い出す。

しかし、いまやらねばならぬことは、もっと他のことなのだ。

――『あれから4年…クラリス回想』アニメージュ編集部編 より

つまり、カリオストロの城の制作当時、TVアニメ第1シーズンの時よりもさらに時代は進み、ルパンが「現実の世界に取り残され」、「ハングリーなルパン」は、完全に過去のものになってしまったということでしょう。

つまり、さらにルパンを変える必要があった。その解決策として、「未来の話にする」「中年のルパンを描く」という方法を取ったと思われるのです。

未来の話であることは、劇中に出てくる「……もう10年以上昔だ。俺はひとりで売り出そうとヤッキになっている青二才だった」というセリフからも分かります。

他にも、オタキングこと岡田斗司夫先生が、いくつかの根拠を挙げていて、それが以下のAmazonプライム・ビデオの番組で解説されているので、参考にしてみてください。けっこう長い番組ですが、「なぜ偽札を捨てたのか?」ということも含めてじっくり解説されているので、おすすめです。



つまりルパンの「完結編」である

『ルパン三世 カリオストロの城』で、ルパンのキャラが違う理由は、時代を意識して、その時代に合う作品にするために、意図的にキャラを変えているということです。

しかも「全く別のルパンを作った」ということではなく、「原作のルパンが、ハードボイルド人生を続けた結果として、中年のおじさんになり、こんなキャラになった」という、原作ルパンとつながったものとして作っていると思われます。

「原作と違う」「キャラが違う」という否定意見に賛成するよりも、他のシリーズとは時系列がずっと後の、遠い未来の出来事、いわばルパン三世の「完結編」「最終回」として作られていると見た方が、ずっと面白いのではないでしょうか。