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「縦スクロールマンガ」が登場した当初は、これからのマンガは全てこうなるかも!とも言われましたが、意外と普及していないようですね。この記事は「縦スクロールマンガ」の可能性と、もしかして「横スクロール」のほうが面白いんじゃないか?という話です。
縦スクロールマンガとは
縦スクロールマンガは、スマホで読むために考案されたマンガの形式です。「タテ読みマンガ」とも呼ばれます。
スマホ画面は縦に固定し、縦方向にスクロールして読みます。本ではなく巻物という感じですね。
大きめでシンプルなコマ割り
従来のマンガのようなコマ割りも可能ですが、大きめでシンプルなコマ割りが一般的です。
かなり縦長なコマ割りも可能なので、1コマが一画面に収まらず、スクロールしながら読むという演出も可能です。
見開きができない
見開きができないので、横に広いコマ割りはできません。
横幅が狭いので、横長のコマを描くと、かなり小さくなってしまいます。
「ページ」や「コマ」という概念が無い?
縦スクロールマンガは、ページをめくるわけではありませんから、そもそも「ページ」という単位が無いわけです。
全編1コマにもできるので、ある意味コマという概念すら無いかもしれません。
縦スクロールマンガの限界
縦スクロールマンガの可能性についてまとめるために、弱点は何か?向いていないことは何か?つまり限界について書きます。
縦長の画面は圧迫感がある
人間は、ヨコ長の画面のほうが自然に感じると思います。
それは、映画やテレビ画面がヨコ長だから慣れているということではなく、人間の視野がヨコ向きに広くなっているのでそう感じるのでしょう。
あと、平面(地面)の上で生活していますから、ヨコ向きに広がっているほうが、広く感じるんだと思います。ですから、縦長の画像を見ると、構図にもよりますが、視野が狭められているような、圧迫感を感じてしまいます。
つまり縦スクロールでは、ヨコに広い景色のコマなどを使って、ダイナミックな世界観を表現することが難しいわけです。
方向の持つ意味に矛盾がある
紙のマンガの場合「右から左に読んでいく」というルールのもとに、左は前に進むイメージがあります。右は逆に、後退するイメージ持っている。
その点について、夏目房之介氏は以下のように述べています。
マンガを読む方向(右→左、上→下)やページをめくる行為に規定された方向や場所の意味と、本来人間の空間意識が備えている意味によって、画面自体の潜在的な意味がマンガ表現の背後に想定される。
―出典:別冊宝島EX「マンガの読み方」203ページより(夏目房之介著)
縦スクロールは下に読み進めるので、「ページをめくる行為に規定された方向や場所の意味」が変わって、下が前進(ポジティブ)、上が後退(ネガティブ)ということになります。
でも、これだと「本来人間の空間意識が備えている意味」とは逆だと思います。
例えば、主人公が上を見るシーンは後退(ネガティブ)方向を見ていることになり、下を向いている場面は前進(ポジティブ)方向を見ていることになります。
人間は普通、上向きをポジティブ、下向きをネガティブと感じると思いますので、「人間の空間意識」と逆になって、矛盾してしまうわけですね。
縦長のコマは使いづらい
縦スクロールマンガでは、縦長のコマを使って演出することができますが、けっこう制約があります。
例えば、主人公が走っている場面をヨコからの構図で描きたいとします。それを縦長のコマで描くと、主人公が横倒しになって、結局一時的に横スクロールみたいになってしまう。
走るだけでなく、投げる、打つ、ジャンプするなど、アクション系の演出にことごとく不利だと思います。縦スクロールは、アクションにも向いていないわけです。
縦スクロールマンガが流行らない理由
縦スクロールマンガの不利な点をまとめると、以下のとおりです。
- 世界観を表現しにくい
- アクションに不利
この2点が弱いので、縦スクロールはSF・ファンタジー・アクション・スポーツ系などに向いていないと思います。
そのためか、縦スクロールマンガといえば、少女漫画系や4コマ・ギャグ系が主流ですね。縦スクロールマンガは、意外と普及していないように思います。
横スクロールのほうがいいのでは?
タテがあるならヨコはないのか?つまり、スマホを横にして、横にスクロールするマンガはないのか?しかし、2018年1月現在、横スクロールのマンガを見つけることができませんでした。
もちろん縦スクロールも面白いんですが、横スクロールのほうがマンガの形態として面白そうな気がするので、その根拠をまとめてみました。
縦スクロールマンガのデメリットは、横スクロールにすれば、ほとんど解消されると思います。
広い世界が表現できる
横スクロールなら、かなりヨコ長のコマを使うことができます。パノラマ写真のように、広い世界観を表現することができますね。
2ページの見開きにとどまらず、ある意味何ページでも見開きにできるようなものです。
方向に矛盾がない
左方向に読み進めていくので、前述のような方向の持つ意味に矛盾がありません。
上を向いたらポジティブ、下を向いたらネガティブという意味も、矛盾なく表現できます。
アクションも自由自在
横長のコマなら、アクションも表現しやすくなります。
走る・投げる・打つ…どんなアクションでも無理なく描けますね。
縦スクロールマンガアプリ一覧
ヨコのほうが面白そうだと散々書きましたが、参考までに縦スクロールマンガアプリの一覧をまとめておきます。
comico(コミコ)
縦スクロールマンガの先駆け的なアプリですね。
内容は、少女マンガ・ギャグ・日常系がほとんどです。
ニコニコ漫画
「オリジナル」作品や「インディーズ」作品の中に、縦スクロールマンガがあります。
全てが縦スクロールというわけではなく、ページ単位のマンガもごちゃ混ぜになっています。
Renta!(レンタ)
こちらでは、紙で出版された作品を、縦スクロール形式に移植した「縦コミ」というものがあります。
紙のマンガと縦スクロールマンガの違いを比較できて、面白いかもしれませんね。
まとめ
この記事で考えた、縦スクロールマンガの可能性、つまり「限界」は以下のとおりです。
- 視野が狭められるので、ダイナミックな世界観を表現しにくい
- マンガの演出として重要な「方向の意味」に矛盾がある
- アクションシーンを描きづらい
- 少女マンガや4コマ・ギャグマンガに向いているが、それ以外には不向き
結論として、横スクロールマンガのほうが面白そうなので、是非読みたいです!誰か作ってくれないかな~…