「プロット」とは?「あらすじ」との違いは?―参考資料をもとに徹底解説!

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ストーリー作りの分野でよくいわれる「プロット」とは何でしょうか。「あらすじ」とは違うのでしょうか。プロットは「ストーリー」という言葉の意味と比較して説明されることが多いです。プロットの意味について、いくつかの資料を根拠にまとめてみました。



ストーリーと比較するとプロットの意味がわかる

プロットの意味を理解すると、「あらすじ」とはかなり異なることがわかります。

その意味を理解するには、「ストーリー」と「プロット」の違いを理解するのが近道だと思いますので、以下に解説します。

ストーリーは事実|プロットはそれをどう語るか

ストーリーは時系列順でならべたもので、プロットは語る順番にならべたものといわれています。これはどういう意味でしょうか。

例えば「歴史的な事実」をもとにして面白い物語を作るために、脚本家が「色々と工夫」をすることで時代劇・大河ドラマなどができますね。

つまり、まず出来事を並べただけの「年表」などを参考にして、それを面白く「語る」ための工夫として、主人公を決め、エピソードを並べ替えるなどして物語を作るという手順です。

この「出来事を並べただけの年表」がストーリーです。もちろん空想の世界での出来事のことも含みます。そして、その出来事を面白く「語る」ために加工したものがプロットです。

この点は、笠井潔著『探偵小説論序説』で説明されています。「物語」を物(モノ)と語(カタリ)に分解して、以下のように解説しています。

プロットは「カタリ」であり、またストーリーは、それにおいて語られる「モノ」である。プロットとストーリーの二重性は、記号の二重性(記号表現と記号内容)を物語的な場において重層的に展開したものともいえる。

―出典:笠井潔著『探偵小説論序説』(太字装飾を加えました)

つまり、ストーリーとは「内容」つまり記号が表現する対象となるモチーフ・題材で、プロットとは「表現」つまりモチーフをどのように表現するか、どのように語るかということですね。

笠井潔氏のこの説明は、ボリス・トマシェフスキーの以下の解説を参考にしています。笠井潔氏は、以下の解説にある「筋」=ストーリーとしています。

は論理的、因果・時間関係におけるモチーフの総体であり、プロットとは、作品中で与えられる順序と連関における同じモチーフの総体である。(中略)プロットはまったく人工的な構造である。

―出典:ボリス・トマシェフスキー『テーマ論』小平武訳(太字装飾を加えました)

つまり、ストーリーとは「論理的、因果・時間関係」で並べただけの、年表のようなものということです。

そしてプロットとは「作品中で与えられる順序」にしたもの、つまり作者が自由に並び替えたもので、「人工的な」ものということですね。

この考え方は、何の役に立つの?

この考え方は、面白い物語を作るために大変重要です。この2つの言葉があるおかげで、物語の作り方の手順がはっきりするからです。

まず、何が起きるか(=ストーリー)を考え、そして、そのどの部分を切り取り、どんな順序で、どのように描くか(=プロット)という手順で物語を考えるべきということを教えてくれるわけですね。

多くの場合は、この手順を無意識でやっていると思いますが、この2つの言葉のおかげで、それを「意識的に」できるようになります。

自分は今「プロット」を考えている、今は「ストーリー」を考えている…というように、頭の中で切り替えができるようになるわけです。その切り替えが弱いと、スムーズに物語が作れなかったり、途中で行き詰まったりしやすくなると思います。

それぞれの定義は色々ある

2つの言葉を比較した場合の定義は以上です。とはいえ「ストーリー」と「プロット」それぞれの単語の定義については、いくつかのパターンがあります。

辞書では、たいていの単語は「(1)…(2)…」といくつかの意味が書かれていますが、それと同じですね。以下に、それぞれの言葉の意味の、いくつかのパターンをまとめています。

ストーリーとは

「ストーリー」というのは、一般的な英単語なので、色々な意味で使われています。ただ前述のとおり「プロット」という言葉と比較される場合は、「ストーリー」は特殊な意味を持ちます。

定義1:時系列でならべたもの

この定義は、前述の定義と同じです。ストーリーとは、出来事を時系列順に並べたものという定義です。それはつまり、単なる歴史の記録とか、ニュース報道のように、事実をまとめただけということです。

物語を作る上で、バックボーンとなる歴史を考えることがありますね。また「主人公がこうなって…ああなって…そうなる」というように、何が起きるかを考えます。

主人公についてだけじゃなく「実はそのころ、主人公が気づかないところで、こんな策略が進行している」など、広い視野で全体の出来事を考えますね。それがストーリーです。

物語に深みを持たせるのに役立つ

この定義での「ストーリー」を考えるのはとても重要です。

お話の筋とは関係のないところで、何が起きているのか、どういう経緯でそうなったのかをよく考えることで、物語に深みが出ます。また、主人公の行動や、演技にも影響を与えるかもしれません。

定義2:単に「物語」のこと

「ストーリー」は一般的な英語なので、単に「物語」という日本語に対応する言葉として使われることもあります。つまり「おはなし」全般のことを指す言葉でもあるわけです。

「プロット」と比較しない場合は、専門的な定義をする必要がないわけですね。



プロットとは

プロットの定義は、主に以下の3パターンがあります。

定義1:語る順番にならべたもの

1つめは、既に紹介した定義と同じです。プロットとは、「素材となる出来事=ストーリー」を、どのように語るかということです。つまり時系列順ではなく、語る順番で並べなおしたものということですね。

同じ出来事を語るにしても、誰の視点にするのか、どこから話し始めるのか、オチから話すのか、最初から話すのか…色々なパターンが考えられます。

1つのストーリーに対して、いくつものプロットのパターンが考えられます。例えば坂本龍馬の人生という「ストーリー」に対して、過去に様々な小説やドラマ、マンガなどで、いくつもの「プロット」が作られました。

実際の歴史ではなく、架空の「ストーリー」についても同じです。同じストーリーを描くにも、スピンオフで違うキャラクターの目線で描いたり、リメイク版で話の筋をアレンジしたりなど、様々な「プロット」がありえるわけです。

定義2:因果関係で並べたもの

少し変わった定義で、「ストーリーは時系列」でならべたもので、「プロットは因果関係」でならべたもの、というものもあります。

「1が起きる。2が起きる。3が起きる」というのがストーリーで、「1が起きたことが原因で2が起こり、2が起きたことが原因で3が起きる」というのがプロットというわけです。

ただ、これだとストーリーとプロットが、ほとんど同じに思えますし、「これを考えて何の役に立つのか」は不明です。

ちなみに前述のボリス・トマシェフスキーの解説では、因果関係で並べることと、時系列で並べることは、ほぼ同じこととしていましたね。つまりプロットは、前述のストーリーの「定義1」と似たような意味で使われる場合もあるということです。

定義3:物語の「アウトライン」

プロットという英語は、そもそも「策略」とか「構想」「見取り図」などの意味で使われます。

つまり、単にお話の内容をおおまかに説明する「アウトライン」のような意味で使われる場合もあるわけですね。話の最初から最後まで、オチもネタバレもすべて含めて、全体をざっくり説明したものです。

プロットとあらすじの違いは?

プロットには、「物語のアウトライン」という意味もあると説明しましたが、そうすると「あらすじ」と同じ意味でもあるのか?と思えますね。でもプロットと「あらすじ」は少し意味が異なるとされています。

「あらすじ」は、Amazonの商品ページに書くなど、宣伝目的に書かれることが多いので、話のオチは説明せず「…はたして2人の運命は?」という感じで、最後まで説明しないことが多いですね。

つまりオチまで全て説明するのは「プロット」で、最後まで説明しないのが「あらすじ」と区別する場合があります。でも本来の「あらすじ」とは、辞書によると以下のとおりです。

およその筋道。あらまし。概略。特に、小説・演劇・映画などのだいたいの内容。

―出典:デジタル大辞泉(小学館)

「オチまでは説明しない」なんて定義はどこにもありません。つまり本来の「あらすじ」は、プロットと同じ意味なんですね。とはいえ、あらすじは宣伝用に使われることが多くなり、オチまで説明しないイメージが強くなったと思われます。

まとめ

プロットとは、「素材となる出来事=ストーリー」を、どのように語るかということです。また、物語のアウトラインという意味もあります。

プロットと「あらすじ」の違いは、宣伝目的かどうかの違いです。プロットはオチまで含めて、話の「全て」を大まかに説明しますが、あらすじは宣伝目的の場合が多いので、話の「一部」しか説明しません。