なぜ必要?物語のテーマとは~小説・漫画のテーマの決め方、考え方

漫画や小説、映画などに登場するどんな物語にも「テーマ」が存在します。テーマとはそもそも何なのか、「そもそも必要か?」という点も含めて、できるだけ分かりやすく解説してみました。「裏テーマ」や「読者が決めるテーマ」も解説します。テーマの決め方や考え方も確認しましょう。

物語の「テーマ」とは何か

まずは物語のテーマとは何か、その定義と意味を確認しておきましょう。

「何について、誰についての話か」ということ

物語のテーマとは、「これって何の話なの?」という問いに対する答えです。

論文などのテーマといえば、タイトルとして表紙に記載するもので「何についての論文なのか」を一言でまとめたものですね。物語のテーマも同じです。

その点は、映画脚本の世界的な参考書『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック』という本の中で、以下のように述べられています。

白紙に書き始める前に、必ず知っておかなければならないこと。それは何についての、誰についてのストーリーか(つまり”テーマ”)である。

出典:シド・フィールド著『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック』安藤紘平、加藤正人、小林美也子監修/菊池淳子訳 P23

つまりテーマは、物語の「5W1H」の中でも What(何)や Who(誰)のことです。

ストーリー中にいろいろなエピソードがあり、複数の登場人物がいるとしても、結局これは誰(Who)の話で、全体を通して何(What)を描いているのかを一言でまとめたもの。それがテーマです。

もちろんその「誰」や「何」はそれぞれ一つとは限りませんが、とにかく物語の中心とする「誰」や「何」がテーマというわけですね。

メッセージ ≠ テーマ

念のためですが、テーマと「メッセージ」を混同しないように注意しましょう。

メッセージとは、ストーリーを通じて何か読者や世間に訴えかけるということですが、テーマとは別の要素です。

作品によってはテーマがメッセージの形式になっていることもありますが、「テーマはメッセージ形式でなければならない」というわけではありません。

ストーリーによって「何か高尚なメッセージを発信しなければ」と気負う必要はないのです。

「裏テーマ」というのもある

表面的な「一般向けテーマ」を設定するだけでなく、ごく個人的な「裏テーマ」を隠しておくことは、多くのクリエイターがやっています。

裏テーマとは、「作者自身にとってこのストーリーは、どんな話なのか」ということです。多くの場合、作者の個人的な想いや、人生経験、今の心境などが、ストーリーにどのように投影されているかを示すものです。

あくまでも「裏」なので、自分をそのまま出す「私小説」的なものとは違います。普通のテーマも提示しつつ、同時に裏テーマも「隠されている」ということです。

裏テーマについて詳しくは、岡田斗司夫先生が公開している以下のYouTube動画でも解説されています。(4分割の続き物です)

裏テーマは多くの作品に設定されていて、多くのクリエイターはそういうことを考えながら物語を作っています。「無意識」に裏テーマができあがってしまうケースもあるようです。

裏テーマのある作品の具体例は、このページ内の「作者自身のことを裏テーマにした作品例」の項目で紹介しています。

読者が決めるテーマもある

作者が決めるテーマとは別に「読者が決めるテーマ」も存在します。

漫画でも小説でも「これがテーマです」と正解をはっきり書くわけにはいかないので、最終的に読者がその作品のテーマが何だと受け止めるかは自由です。

だからといって、作者はテーマを決めなくてよいというわけではなく、後述するようにストーリーを作る設計図として、「作者用のテーマ」もまた別に必要です。

作者用のテーマが「そのまま読者に伝わってほしい」という人もいれば、「読者にお任せします」という人もいるでしょう。作者用と読者用、どちらのテーマが正解とも言い切れません。

いずれにしても「作者用のテーマ」と「読者が決めるテーマ」は、絶対に一致しなければいけないとは限らないのです。

無くてもいい?物語の創作にテーマが必要な理由

「テーマなんて不要だ」という意見を持つ人もいるでしょう。ただ、それはストーリー創作理論としては一般的ではありません。テーマが必要な理由として、以下の2つが挙げられます。

ストーリーの流れやキャラ設定を決める「基準」となる

テーマがあいまいな状態では「どんな話の流れにするか」「どんなキャラを登場させるか」など、ストーリーの詳細を決めるのが難しくなります

テーマが明確に把握できれば、アクションと主人公が決まり、ドラマとしてのストーリーラインがはっきりと見えてくる。

出典:シド・フィールド著『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック』安藤紘平、加藤正人、小林美也子監修/菊池淳子訳 P29

つまり、テーマ無しでストーリーの構成や登場キャラを決めても、いらないエピソードを盛り込みすぎたり、必要のないキャラが登場したりなど、「何の話なのかよく分からないストーリー」ができあがってしまうリスクが高くなるのです。

もちろん「ストーリーを書いていくうちにテーマが見えてくる」ことはよくありますが、その場合「後から気づいたテーマに合わせて修正する」ことになるでしょう。

いずれにしてもテーマは、ストーリーを作るための設計図となり、作品の「軸がブレる」ことを防いでくれるのです。

自分をさらけ出し、良い作品にするため

自分なりの「裏テーマ」を設定することは、作品に「深み」を持たせ、オリジナリティを高めるために役立ちます。

裏テーマとして自分の一部が作品に投影されることで、自分にしか書けない「唯一無二」の深みを持ったストーリーとなり、オリジナリティも高くなるのです。

「この話は自分のことなんだ」と思うと、作り手としてもモチベーションも高まり、良い作品を作るパワーが湧いてくるでしょう。

作者自身のことを裏テーマにした作品例

多くの作品に存在する裏テーマの例を3つ紹介します。

映画「MEMORIES」

1つ目の例は、アニメ映画「MEMORIES」です。

DVDの特典インタビューで、演出家本人が「裏テーマ」のことを説明しています。以下に、DVD特典である森本晃司のインタビューの一部を引用します。

(この映画のストーリーは)「ある磁場からの脱出だ」っていうような話なんで…それは、脚本家の今さん(今敏)とも言ってたんだけど。

二人共、大友さんとずっと一緒に仕事をさせてもらってて…いかに大友克洋という磁場から脱出するかっていうような話だなっていうのは、よく、二人で話してて…

それ(大友克洋からの脱出)ができないとこれ(この映画)は、成功じゃないよねっていうのはよく言ってますよね。

出典:『MEMORIES』DVD映像特典インタビュー。()内は加筆

『MEMORIES』DVD(Amazon)

つまり「大友克洋という巨大な才能の近くにいつまでも居るのではなく、そこから脱出して、いかに自分たちの才能を発揮していくのか」という自分たちの話と、作品の話がリンクしているということでしょう。

この作品は、大友克洋が自身の原作マンガを映像化したもの。つまり、もともとは脚本の今敏や演出の森本晃司が考えたストーリーではありません。

ということは、最初っからそういう裏テーマをねらって作ろうとはしていないということですね。「作ってるうちに、だんだん裏テーマが見えてくる」ことを示す例でもあります。

映画『風立ちぬ』

2つ目の例として「風立ちぬ」を見てみましょう。

この映画は、そういう発想のオンパレードです。中盤に、主人公の二郎と、尊敬する「カプローニさん」との会話で、こんな台詞があります。

カプローニ 創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も、設計家も、同じだ。君の10年を、力を尽くして生きなさい。

出典:映画『風立ちぬ』

設計家の映画なのに、なぜか「芸術家」というキーワードを入れてきていますね。つまりクリエーターにとって、一番脂がのっている時期は10年しかないという話です。

宮崎駿自身のクリエーター人生の話のようにも思えます。そして、この話はラストシーンに繋がります。

カプローニ 君の10年はどうだったかね。力を尽くしたかね。

二郎 はい。…終わりはズタズタでしたが。

出典:映画『風立ちぬ』

これやはり、宮﨑駿が映画監督としての人生を振り返る話に思えます。

アニメーターとして、演出家として、映画監督として力を尽くしたけど、最後はズタズタ。でも悔いはない」というような裏テーマを感じさせるのではないでしょうか。

マンガ『ブラックジャック』

名作「ブラック・ジャック」にも、手塚治虫自身のことを描いたようなエピソードがあります。

「けいれん」という話で、ブラック・ジャックは突然、何手の震えによって手術ができなくなります。外科医にとっては致命的な症状です。

手塚治虫「ブラック・ジャック」―「震える!」より―手が震えるブラック・ジャック

手塚治虫『ブラック・ジャック』Kindle版 10「けいれん」より

手塚治虫自身が晩年に、マンガを描くときに手が震えていたという話は有名です。

漫画家の大切な商売道具の手が、思うように動かなくなるとどうなるか」というような裏テーマを感じるのではないでしょうか。

物語のテーマの決め方・考え方

では具体的に、物語のテーマを決める方法を解説します。裏テーマを考えるコツも見ておきましょう。

多くのテーマは「文章」で示される

物語のテーマは、「友情」とか「愛」などの単語ではなく、多くの場合「文章」で示されます。

前述のとおりテーマとは「何について、誰についての話か」なので、「〇〇という人物が、××をする話」のような文章で示せる形のテーマを考えましょう。

もちろん、突き詰めると「友情」とか「愛」などの単語になることもありますが、基本としては文章形式で考えることをおすすめします。

構想を練っていくと「見えてくる」

テーマは、漫画や小説のアイデアを練る段階で「一番最初」に決めるとは限りません。

どんなストーリーにするか、どんな設定にするか、いろいろなメモを書いたりイラストを描いたりして考えていくうちに、「テーマに気づいていく」ことがほとんどです。

ただし「できるだけ早め」にテーマを見つけることで、ストーリーの詳細を決めやすくなります。アイデアを練りながら、「この話のテーマは何か」と、できるだけ早く見つけるようにしましょう。

ストーリーと「作者自身」を比較してみる

裏テーマを考える場合には、ストーリーと自分の共通点を探すことで、見えてくることがあります。

話の流れや、キャラの性格・行動などに、自分の何かが投影されているような部分はないでしょうか。

自分の「性格」だけでなく「過去の経験」や「最近の状況」「環境の変化」「今後の人生について思っていること」など、自分のことならなんでもOKです。

自分を見つめ、ストーリーと比較することで、裏テーマが見えてくるのです。

まとめ

物語のテーマとは、そのストーリーは「何について、誰についての話か」ということです。テーマを考えることは、軸のブレない、深みのある物語を作るために役立ちます。

当サイトでは、他にもさまざまなストーリー創作理論として「一般的に知られていること」を解説しています。以下の記事ではその全体を一覧にまとめてあるので、参考にしてみてください。

pen-noteストーリーの作り方|総まとめ!一般的な創作理論を整理してみました