脚本・小説のセリフのタブー「説明台詞」とは?それを避ける4つのコツ

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脚本、小説などのセリフのタブーとされる「説明台詞」とは何でしょうか。説明台詞の意味と、それを書いてしまうことを避ける方法について、参考文献を使いながら詳しくまとめています。

説明台詞(せつめいぜりふ)とは

説明台詞とは「キャラクターが何かを説明するセリフ」のことではなく、「作者が何かを説明するために、キャラクターに言わせている不自然なセリフ」のことです。

平田オリザ著『演劇入門』に、説明台詞の例が挙げられています。以下のとおりです。

舞台設定を美術館だとしよう。主人公が入ってきて、いきなり、

「あぁ、美術館はいいなぁ」

と独りごとを言う。これがいちばんダメなセリフの例である。

出典:平田オリザ『演劇入門』(講談社)

演劇入門 (講談社現代新書)

「あぁ、美術館はいいなぁ」というセリフは、「美術館にいることを説明しなきゃ」という作者の意図が見え見えの不自然なセリフですね。これが説明台詞です。

「心理描写しなきゃ」「キャラを立てなきゃ」「設定を説明しなきゃ」など、作者が説明しようとしている感じが読者にも伝わってしまう不自然なセリフのことを指しています。

説明台詞の見分け方、つまり「何をもって不自然とするか」というのは、永遠の課題ともいえる難しい問題です。「この状況で、このキャラは、こんなことを言うだろうか?」「ストーリーの流れを説明したくて、言わせているセリフなのでは?」など、色々と自問してみて、不自然かどうか検証していくしかないでしょう。

説明台詞を避けるための4つの方法

説明台詞は避けるべきですが、必要な情報は伝えなければいけません。どうすればいいのでしょうか。4つのコツを紹介します。

キャラクターの言いたいことを言わせる

セリフは基本的に「キャラクターが言いたいことを言わせる!」という意識で書くべきです。

「ここで、こういう情報を言わせなくちゃ」という作者の意図を、なるべく考えないことが重要です。その点が『荒木飛呂彦の漫画術』で、以下のように説明されています。

セリフを書くときの基本的な態度は、自然体である、ということがポイントです。キャラクターを動かしていくときは、このキャラクターならこういう状況でどんなセリフが出てくれば自然か、ということだけで、セリフをどう書こうか、ということは考えずにどんどん描いていき、後で読み返してみて、わかりやすいかどうかチェックするのです。

出典:荒木飛呂彦著『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社)

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

多少、話題の誘導などは必要かもしれませんが、とにかくキャラクターの気持ちになって、自然と出てくるセリフを書く。もちろんそのためには、キャラクターがしっかりできている必要がありますね。

説明しても不自然にならない状況をつくる

ある場面で、どうしてもキャラクターに何らかの情報を言わせたい場合「それを言っても不自然ではない状況」にする必要があります。

よく用いられるのは、「その情報を知らない人を聞き手にする」という方法です。

例えば、ある事件の内容が分かるようなセリフを書きたいとしましょう。その場合、その事件について「よく知っている者同士の会話」だと、事件について説明できません。お互い知っているはずの情報を、わざわざ口に出すのは不自然だからです。

逆に、対話する相手がその事件について知らない場合は、説明しても不自然ではないかもしれません。

このような手法について、前述の『演劇入門』では、以下のように説明されています。

家族内の会話だけでは、お父さんの職業さえ観客に伝わらない。

演劇においては、他者=観客に、物語の進行をスムーズに伝えるためには、絶対的他者である観客に近い存在、すなわち外部の人間を登場させ、そこに「対話」を出現させなくてはならないのだ。

(中略)

一般に、このような他者の存在をうまく挿入できるかどうかが、すぐれた戯曲、優れたシナリオの最低条件となる。

出典:平田オリザ『演劇入門』(講談社)

絶対的他者である観客に近い存在」を登場させる手法は、ファンタジーでもよく使われますね。

現実世界にいた主人公が、異世界に行く。主人公は、その世界のことを何も知らないから、異世界の解説キャラが説明してくれても不自然ではないというわけです。

他にも「キャラの性格上、説明せずにはいられない」とか、「薬の作用で説明させられている」など、説明しても不自然にならない状況をつくる方法はいろいろ考えられます。

他の方法で説明する

セリフを使わなくても、必要な情報を説明することができます。

小説であればセリフ以外の文章、いわゆる「地の文」で表現できますね。マンガでも「地の文」が使えます。その点について詳しくは、以下の記事で解説しています。

マンガの心理描写のコツ|小説の「地の文」を使えば、心理描写の幅が広がる!

マンガの場合は画で説明することもできます。映画やアニメであれば、音楽や効果音でも説明できますね。画や音を使えない小説でも、状況や風景の描写によって説明することで、画や音で説明することに近い演出が可能です。

無理にセリフで説明しなくても、方法は色々あるってことですね。

説明しない

自分の作品を校正していて、説明台詞を見つけちゃったとき、それを書き直すのではなく、そのセリフを「消しちゃう」という方法もあります。つまり、説明しないことにするわけです。

前後の流れをよく分析してみると、そのセリフを消してしまっても、読者には十分に伝わることに気づくかもしれません。

まとめ

説明台詞とは、「作者が何かを説明したくて、キャラクターに言わせている不自然なセリフ」です。そして説明台詞を避ける4つの方法とは以下のとおりです。

  • キャラクターの言いたいことを言わせる:作者の言いたいことについては考えないようにする
  • 説明しても不自然にならない状況をつくる:話す相手や状況を工夫する
  • セリフ以外で説明する:地の文、画、音楽、効果音などで説明する
  • 説明しない:説明しなくていい情報は説明しない

今回の参考文献

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

演劇入門 (講談社現代新書)