モーションコミック「ULTRAMAN」のワンシーン

清水栄一、下口智裕「ULTRAMAN」モーションコミック版より

デジタルマンガの描き方

モーションコミックについて考えるー動くマンガってどうなの?

投稿日:2015年12月7日 更新日:

デジタル技術の発達により、「動くマンガ」というものが現れてきました。

「動いたらマンガじゃなくてアニメじゃん」という意見もあるかもしれません。

動くマンガを作る意味はあるのでしょうか?この記事では、マンガとアニメの違いをまとめた上で、「動くマンガの理想形」について考えたいと思います。

幾つか出ている「動くマンガ」

モーションコミック

「銀河鉄道999」の「まんが動画」とか、「ブラックジャックによろしく」の「コミックシアター」とか…

動くマンガが何種類か出ていますが、最も将来性のありそうなのが「ENSOKU」というサイトで提供されている「モーションコミック」というものだと思います。

モーションコミック「ULTRAMAN」のワンシーン

モーションコミック「ULTRAMAN」第1話より

 

ほとんどはカラーで、音楽と効果音がつき、声もついています。クリックして読みすすめるタイプではなく、自動的にコマが進みます。

動くマンガってどうなの?

動くマンガが出てきた今、マンガとは何か?を明確にしておかないといけないと思います。

マンガとアニメは何が違うのか?マンガは、アニメと比べて、白黒だし、動かないし、音も出ない、劣ったものなのでしょうか。

「マンガにしかできないこと」とは?逆に「マンガの弱点」とは?そして「アニメの強み」とは?というポイントをまとめてみました。

マンガにしかできないこと

文字で語ること

マンガの強みは、なんといっても「文字」です。

小説にしかできないような「地の文」を使った心理描写が、ある程度可能です→くわしくはこちらのページ:『マンガの心理描写に、小説の「地の文」の技術が大切だという話』を参照

「オノマトペ」もマンガの特徴です。音などを文字で表現した「ドカーン!」「ゴゴゴ…」「どてポキぐしゃ」とかいうやつですね。これは音だけでなく感情とか、質感とか、ギャグっぽさとか色々なことを表現できます。

あと、フキダシの外側に、たいてい手書きで書いてある「セリフのようななもの」ってありますよね。

これは、キャラが表情で語っていること説明したり、重要じゃないセリフだったり…色々な目的で使われます。

これを取り入れているアニメ(「俺物語!」「ちはやふる」等、浅香守生監督作品)もありますが、限界があると思います。やはりマンガならではの表現といっていいでしょう。

止まっている絵が動く

マンガは、止まっている絵をいかに動いて見えるようにするかを追求してきた世界です。

効果線や構図やキャラクターのポーズ等によって、止まっている絵を「動いているかのように見せる」技術です。

中途半端に動かすような、低クオリティのアニメだと、「マンガの動き」に負けていることさえあります。

ですから、動くマンガの理想像として、中途半端に動かすよりは、マンガならではの、静止画が動いているように見せる技術を使ったほうがいいと思います。

マンガの弱点

コマの数に限界がある

映画やアニメだと、カットをどんどん追加できます。風景のカットをたくさん入れたり、2つの違う場面を「カットバック」させたりと、短いカットならどんどん追加することができます。

映像の場合の制約は「時間」なので、カット数は、ある程度の自由が利くわけです。

一方マンガの制約は「ページ数」。もっと厳密にいえば「面積」です。いい感じの景色のコマを沢山入れようとすれば、「面積」をかなり消費します。

何ページ描いてもOKなら、いくらでもコマを追加できるかというと、そうでもないです。コマを増やすほどにテンポ感も変わってくるからです。

動くマンガで、この「コマの数の制約」がゆるくなるのであれば、すごくいいと思います。

右から左というルール

マンガは「右から左に読む」というルールがあります。そのために、構図とか、キャラクターの立ち位置とか、フキダシの位置とかを調整して、「右から左に」読みやすいように描かれています。

それはもちろんマンガの「特徴」なのですが、「制約」でもあります。動くマンガで、この「右から左の制約」から解放されるなら、いいことだと思います。

アニメの優れた点

強力な味方「音楽」!!

なんといっても音楽がつくのは大きいですよね。マンガにも音楽がついたらいいのに…と、マンガ描きならだれしも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

動くマンガで「音楽」がつけられるなら、マンガは強力な味方を得ることになるでしょうね。

声優の演技力

声優の演技があったほうが、ただ文字として書かれている言葉よりもいいと思います。これはアニメの強みですね。動くマンガで、うまく取り入れられればいいんですが…。

デジタルマンガといいつつ、書籍化前提の白黒作品がほとんどですよね。これってホントにもったいないです。

白黒で…トーンを使って描く…なんていうのは、印刷のために必要なだけのことです。せっかくデジタルで作るんだからカラーじゃないと!

美しい背景をつけられる、キャラクターの髪の毛や肌の色の違いも表現できる、影もハイライトもつけ放題…カラーの強みは沢山あります。

動くマンガであれば、書籍化しにくいと思いますので、当然カラーが主流になってくれることを期待しています。

理想の「動くマンガ」とは

以上、マンガとアニメの比較をした上で、「理想の動くマンガ」について考えたいと思います。

「モーションコミック」を基準に考えてみましょう。以下、YouTubeで公式に無料公開されている「ULTRAMAN」のモーションコミックです。

話す速度で文字やコマを表示する

まず気になるのが、先に文字としてセリフが全部見えちゃった状態で、後を追うように声優がしゃべっていることです。

一般的に、文字を読む速度は、声優の読む速度より速いですから、じれったい感じがします。声優の話す速さと、文字を表示するタイミングを同じにしてほしいものです。

声優なしでもOK

自動的にコマを進める場合、それぞれのコマを何秒表示させればいいのかが難しいところです。

読むのが速いひとにとっては「なかなかコマが進まなくてイライラする」ことになりますし、遅い人には「あ~まだ読んでないのに切り替わっちゃったー」ということになります。

モーションコミックでは声優を使っているので、読むのが速い人でもイライラしないようになっています。

とはいえ、さきほど考えたように、声優の読むような速さで文字を表示すれば、声優なしでも大丈夫だと思います。

中途半端な動きは不要

動くマンガといいつつ、アニメーションは抑え目になっていますね。「中途半端な動きはつけない」という方針でしょうか。

すでに考えたように、マンガには「止まっているのに動いてみせる技術が」あるので、中途半端なアニメーションは不要だと思います。

やるなら本気の動きをつけるとか、手間をかけなくてもマトモな動きになりそうなところだけにしたいものです。

効果音は不要

「オノマトペ」の部分や、オノマトペのない部分にも効果音をつけていますね。全体的にいい感じですが、ところどころ不自然な感じになっています。

例えば、5:30あたりで、メガネをテーブルに置くシーンで「コトン」と眼鏡を置く効果音がついています。でも「メガネがちょうどテーブルに当たったときに音が鳴った」という感じがしない。これは、静止画だからですね。

つまり、効果音をつける場合は、アニメーションが不可欠だということです。マンガらしい「静止画」に、効果音は付けにくいわけですね。

すでに述べたとおり、中途半端なアニメーションはつけないほうがいいと思うので、効果音も不要だと思います。

それに、マンガならではの「オノマトペ」は、実際の音では表現できないような色々なことを表現できます。

例えば、冒頭の「進次郎くんがテテッと走っていく」コマの「テテッ」というオノマトペには、走る音だけでなく「元気に走っていく」というイメージも含まれていると思います。

これは音では表現しにくいもので、「オノマトペ」独特のものです。こういうマンガらしい「オノマトペ」の強みををちゃんと使うためにも。効果音は不要だと思います。

「文字の強み」をちゃんと使う

「ULTRAMAN」のモーションコミックで一番残念なのが、フキダシの外にある「セリフのようなもの」も声優が吹き込んでしまっていることです(14:50あたりの「いってーなー」など)

前述のとおり、フキダシの外にある「セリフのようなもの」は、重要度が低いセリフだったり、表情の意味を言葉にしただけでセリフではないものだったります。それに声優が声を入れちゃったら台無しです。

(例えば、14:50あたりの「いってーなー」は、セリフというより、そんな気持ち、そんな表情であることを表していると思います)

動くマンガが「アニメとは違う」といえるためにも、「文字の強み」をもっと生かしたほうがいいと思います。

音楽は絶対つけたい

やっぱり音楽だけは付けたいです。

クリックして読みすすめるタイプだと厳しいですが、「モーションコミック」のように、自動的にコマを進めてくれるものであれば、問題なく音楽を付けられます。

これで、自分のマンガにいい感じのBGMや主題歌やエンディング曲だって付けられちゃうわけです。好きな曲を勝手に使うと怒られますので、著作権フリーの素材を購入して使いましょう→おすすめ音楽素材サイト:AudioStock

レイアウトは映像っぽくする

「右から左、上から下へ」読むという制約は、動くマンガの場合は不要です。フキダシが表示された順番で読むことになります。

これで構図も自由になり、マンガっぽい構図ではなく、映像っぽい構図にする必要があるでしょう。動くマンガを作るクリエーターは、映像製作の技術を学ぶ必要があるでしょうね。

まとめ

私の考える、理想の「動くマンガ」は以下のようなものです

  • セリフは、話す速度で表示する
  • 声優は有りでも無しでもOK
  • 中途半端な動きはつけない
  • 効果音は基本的に付けない
  • 自動的に読みすすめるタイプ
  • 音楽は付ける
  • 映像的なレイアウト
  • 当然カラーで!

この形なら、アニメではなくマンガである!と言えると思います。それに低予算なので、個人でも簡単に作れるレベルです。これであなたも、主題歌つきBGMつきの動くマンガシリーズを世に送り出すことができちゃうというわけです。

こんなマンガがyoutubeとかにあふれてきたら、いよいよちゃんとしたデジタルのマンガが出てきたと言えるんですけどね。

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