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カラーマンガを描くための理論は、白黒マンガの理論とは少し違う部分があります。「色の理論」を考える必要があるからです。それは、アニメとも違う塗り方です。この記事では、カラーマンガの色の塗り方について、「マンガ記号論」の観点からまとめています。
カラーマンガと白黒マンガの違い
カラーと白黒では、マンガの表現方法が全然違っていて、「次元が違う」ともいわれています。
ただ白黒マンガに色を付けたらカラーマンガになるというわけではなく、カラーマンガはカラーなりの理論をもって描く必要があるわけです。特に重要なのは「色の記号性」について考えることでしょう。
白黒は「線」/カラーは「面」
白黒マンガは、基本的に「線」で表現する世界ですが、カラーマンガは基本的に「面」で表現する世界です。そういう意味で「次元」が違います。
つまり白黒マンガは「線」でお話を作る世界ですが、カラーマンガは「面」=「色」でお話を作る世界だということです。白黒は「線」、カラーは「面」という話の根拠は、夏目房之介の著書にある以下の言葉です。
もっとも重要な要素は線です。もちろん、線ではなく色彩のみによる面であることもあるし、またスクリーントーンやCGによるドットのつくる面が入ることもあります。
ですが、日本では色彩だけによるマンガの絵というのは、あまりありません。廉価な雑誌や単行本が主流で、色をつけるような高価なものはごく一部でしかありません。
(中略)
そういう部分を除けば、現在マンガのほとんどが線画によって成り立っていることになります。
―出典:夏目房之介著『マンガはなぜ面白いのか―その表現と文法』より
この文章は、マンガは「線」でできた「記号」の集合体だという「記号論」について説明しているものです。記号論について詳しくは以下の記事にまとめています。
マンガの描き方|「マンガ記号論」って何なの?描くときにどう意識したらいいの?
カラーマンガは「面」であることに軽く言及していますね。白黒マンガが「線」でできた「記号」の集合体ならば、カラーマンガは「面」でできた「記号」の集合体ということでしょう。
この本が書かれた1997年には「電子書籍のマンガ」とか「webマンガ」という概念は一般的ではありませんでした。つまり、カラーのマンガは少数派だったので、マンガ論からちょっと外しますと説明していますね。
でも今は、インターネットを通じて、カラーマンガが無料で読めちゃったりする時代です。マンガも「面」のことを考えなければいけない時代がきたんですね。
色には色々な意味がある
カラーコーディネートなどの分野では、色にはそれぞれのイメージがあり、色をよく選ぶことで印象を作っていくという理論がありますね。
例えば以下のように、色ごとに異なるイメージがあり、人に与える印象が異なります。
- 青:清潔・冷たい・悲しみ・etc…
- 赤:興奮・活発・熱い・etc…
- 緑:おだやか・平和・自然・etc…
このような色ごとのイメージの違いをうまく使うことで、ストーリーを演出していくことができます。適切な場所に、的確なイメージの色を塗っていくという。白黒マンガにはできない選出ができるわけです。
カラーマンガを描く際の注意点
では具体的に、カラーマンガを描くうえで、「色の記号性」をどのように意識すればよいのでしょうか。
色の意味を意識して塗る
記号論っぽくカラーマンガを描くならば、色を「記号」として、意味を持たせながら描いたほうがいいでしょう。
例えば、「明るい性格のキャラの服装や髪の色を、赤などの明るいイメージの色にする」「重苦しいシーンの背景は、グレーなど暗いイメージの色を使う」「キャラの冷酷さを表現するために、部屋の明かりを、冷たくて青っぽい蛍光灯にする」などです。
とにかく、「色は記号だということを意識して描く」ということでしょう。注目してほしいところは目立つ色をつける。逆に、どうでもいいところに目立つ色を置かないなど、よく考えて色を使うということです。
視線誘導を妨げない色塗り
カラーマンガは、とにかく色の使い方に注意しないと読みにくくなります。背景に何気なく描きこんだ小物が、やけに目立つ色だと、読者はそこに目が行ってしまうでしょう。これは白黒マンガでは起きない現象ですね。
例として、マンガじゃなくて恐縮ですが以下の白黒写真と、その元になったカラー写真を比較してみます。
カラーの写真の方が、明らかに視線誘導のポイントが多く、以下の丸をした箇所など、色々な部分に視線が行ってしまうことがわかります。
このように、意味もなく視線を誘導するポイントが多くなると、マンガの読みやすさに悪影響が出てしまうわけです。
目出たせたくない部分の色は、他の部分と似たような色にするなどして統一感を持たせて、視線誘導を妨げない工夫が必要になります。
カラーマンガの色塗りはアニメと違う
アニメの場合は、動きによって特定の場所を目立たせることができるので、背景がカラフルでも問題ないことが多いでしょう。
でもマンガは、読者の視線の流れが、読者の読む順番を決めるので、読みやすさにかなりの影響が出てしまうわけです。視線の流れが変わると、できごとの順番さえ変わる場合があります。
カラーマンガの背景は、アニメと同じ塗り方ではダメな場合が多いということです。マンガの視線誘導については、以下の記事を参照してください。
マンガのコマ割りのコツ|ネームを切るときの基本「視線誘導」とは?
まとめ
カラーマンガの場合、白黒マンガでは考えなくてよかった「面」や「色の記号性」を考える必要があります。
こういうところまで意識したカラー作品は、まだあまり出回っていないかもしれません。白黒マンガに色をつけただけの作品が多いですね。まだまだカラーマンガは未発達ということでしょう。逆にいえば、そこにフロンティアがあるってことかもしれません。
マンガの描き方について、以下の記事も参照してください。