写真を使って描くといえば「トレース」をイメージするかもしれません。とはいえ「トレース」は効率が悪く、写真を使う手法としては邪道でしょう。この記事では、写真を使って背景・風景画を描く方法の基本について、まとめています。
目次
トレース(トレス)とは
一応、ここでいう「トレース」(トレス)の定義をしておくと、写真や絵などの輪郭線をなぞって、「線画」を作ることですね。
絵の練習のためにやる場合もありますし、その線画を元にして、風景画やイラストなどを作る場合もあります。
トレースは、アナログ時代は「トレース台」などを使って行われていました。元となる絵の上に白い紙を置き、下からトレース台で光をあてて下の絵が見えるようにして、輪郭線をなぞるという方法です。
デジタルで作画するためのソフトが発達した今でも、トレースをする人がいます。写真を画面に表示させて、輪郭線をなぞって「トレース」をするということがあるようです。
風景画やイラストを描くためのトレースは、デジタルでも必要なのでしょうか?
トレースは自動でも可能
写真から輪郭線だけを抽出するのは、自動的にできちゃいます。つまり、写真を元にして風景画を描くために、いちいち手作業でトレースする必要はありません。
昔は、自動だと不自然な感じの輪郭線になる場合が多かったのですが、デジタル作画ソフトが進歩したので、今ではかなり自然に抽出できるようになりました。
「自動では自分のタッチを表現できない」というのも一理ありますが、その点も作画ソフトが進化したので、オリジナリティを出す方法はいくらでもあります。
トレースなしで写真から背景を描く方法
では、手作業でトレースするという面倒な作業をしないで、写真から風景・背景画を描くにはどうすればいいのでしょうか?白黒の場合と、カラーの場合で少し異なります。
白黒の場合はマンガ用ソフトを利用する
白黒の場合は、輪郭線の抽出を自動でやってくれる高度な機能と、「トーン」を貼る機能があるソフトが必要です。
「Photoshop」でも輪郭線は作れますが、「トーン」の機能が弱いので、マンガ用のソフトをおすすめします。現状では「CLIP STUDIO PAINT」一択です。
CLIP STUDIO PAINT を使って、トレースなしで写真から白黒背景を描く方法については、以下の記事を参照してください。
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カラーの場合は輪郭線なしでもいい
カラーの風景画の場合、そもそも輪郭線は描かないことが多いですね。大まかな形をとるための「下描き」として輪郭線を描いたとしても、色を塗ったら結局その下描きは見えなくなります。
ですから写真を使ってカラーの風景画・背景画を描く場合は、手作業のトレースなんてやっている人はほとんどいないでしょう。
カラーの場合は「写真を加工するためのソフト」を使えば、簡単にイラスト風に仕上げることができます。詳しい方法については、以下の記事を参照してください。
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描き込むことでオリジナリティを出す
画像処理しただけだと、どうしても多少は機械っぽくなります。自動には限界があるわけです。
そこで大抵のクリエーターは、加工した写真の上から描き加えることで、自分のタッチを追加し、オリジナリティを出しています。処理した写真を「下描き」として使うわけですね。
このように「写真を処理+描き込む」というのが、写真を使って背景を描く基本でしょう。
写真を使って背景を描いているクリエーターの例
写真を使ってオリジナリティのある背景を描いているクリエーターの例を、2人挙げてみました。
白黒編:浅野いにお
NHK「浦沢直樹の漫勉」2015年9月18日の放送で、マンガ家「浅野いにお」の作画方法が紹介されました。写真を使って背景を作る様子が、結構詳しく撮影されています。
トレースではなく、写真を画像編集ソフトで処理したものを印刷し、アナログの線を加えるといった方法です。
カラー編:新海誠
アニメ監督「新海誠」の作品は、デジタル技術を駆使した背景美術が美しいことで有名ですね。
新海誠の背景も、写真を処理したものをベースにして、そうとう描きこんでいます。写真に写っていないものを描き加えたり、光を当てたり、影を増やしたりして、もはや写真の原型をとどめていない感じです。
むしろ写真をベースにしているからこそできる、美しい表現だといえるでしょう。
写真から背景を描くためのソフト
実際にどんなソフトを使えば、トレースなしでも写真を使ってきれいな背景を描けるのでしょうか。
白黒なら CLIP STUDIO PAINT
写真を使って白黒マンガの背景を描くなら「CLIP STUDIO PAINT」一択でしょう。写真をマンガの背景風に変換するための専用機能があるのは、現状ではこのソフトだけだからです。
このソフトは2種類のグレードがありますが、上位モデルの「EX」にしか、この専用機能はありません。
専用機能というのは「LT変換」という名前です。詳しくは公式サイトでチェックしてみてください。
カラーなら Photoshop
カラーの背景を描くなら「Photoshop」でしょう。写真の処理という点での性能は抜群ですし、色々なノウハウがネットに転がっているというメリットもあります。
昔は高くてなかなか手が出ないソフトでしたが、今では月額制で利用できるようになっており、「フォトプラン」なら980円/月で利用できます。
月額制なら、常に最新版を利用できます。技術がめまぐるしく発展していっているので、おすすめの利用方法です。
写真は自分で撮るかフリー素材を使う
写真は、自分で撮影するか、著作権フリー素材を探しましょう。著作権フリーといっても、「加工OK」「クレジット不要」の、いわゆる「パブリックドメイン」の素材じゃないと危険です。
「パブリックドメイン」については、以下の記事を参照してください。
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有料の画像サイトのメリットは、そのクオリティの高さですが、加工してしまう目的ならクオリティはほとんど関係ありませんので、無料サイトがおすすめです。
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まとめ
写真を使って、トレースなしで風景画・背景画を描く方法とは、以下のとおりです。
- 白黒の場合は、輪郭線の自動抽出を利用する
- カラーの場合は、写真を変換したものを下描きにする