東村アキコ「かくかくしかじか」より

マンガの描き方 画力アップのコツ

マンガの描き方|デッサンは本当に必要か?画力アップに必要な能力とは・・・

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マンガ・イラストが上手くなりたければデッサンをやれ!と時々いわれますが、本当でしょうか?

この記事では、マンガ・イラストのいわゆる「画力」を上げるにはどんなスキルが必要なのか?東村アキコ作「かくかくしかじか」をきっかけに考えたいと思います。

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デッサンのうまさとマンガの上手さはちょっと違う

「かくかくしかじか」は作者の東村アキコの実体験にもとづく作品ですね。

かくかくしかじか 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

主人公(作者本人)が「先生」のもとでデッサンをしまくって、美大に行って、やがて漫画家デビューするわけです。

デッサンが上手いのだから、マンガの絵もそうとう上手いはずだと思いきや、こんなシーンがあります。

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンが下手といわれる主人公

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンが下手といわれる主人公

 

編集者から「デッサンがダメ」と言われちゃったわけです。

これは…ちょっと的外れなアドバイスをしちゃった編集者も恥ずかしいわけですが、それは置いといて…このすぐ後のコマで、面白いセリフがあります。

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンとマンガのうまさは別

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンとマンガのうまさは別

つまり、デッサンのうまさとマンガの絵のうまさは、ちょっと別のものであるということですね。全然別ではないでしょうが、ちょっと違う・・・

・・・どう違うのか?という話の前に、デッサンとマンガの絵の上手さの関係についての一般論をおさえておきましょう。

デッサンはマンガの絵の基本とされているが・・・

一般的に、デッサンはマンガの絵の基本とされています。

人間などを写実的に、リアルに描く技術を身につけて、そのリアルな絵を「デフォルメ(変形)」することでマンガの絵になると言われています。

でも実際は…「リアルな絵→デフォルメ」という手順をいちいち踏んで、マンガの絵を描く人って、少ないんじゃないでしょうか。

ほとんどの人は、ただ自由にらくがきしたり、好きなマンガの絵をまねしたりすることから始まるのではないでしょうか。

いずれにしても「デッサン力」だけでは、マンガを上手くかけないことは「かくかくしかじか」にも描かれているとおりです。

では、どんな能力があれば、マンガが上手く描けるのか?2つの能力をとりあげてみたいと思います

記号化する能力

手塚治虫は「記号化」が上手かった

手塚治虫の絵について、西上ハルオ著「『新宝島』研究」という本に、面白い一節があります。

この本は入手できなかったんですが、大塚英志著「アトムの命題―手塚治虫と戦後まんがの主題」という本に引用されていたので知りました。つまり引用の引用です。

アトムの命題 手塚治虫と戦後まんがの主題 (角川文庫)

こどものかいた絵は、うまいとはいえないが、実によく印象をつかんでいることがある。それらは、デフォルメした絵でもなく、単純化した絵でもない。印象に忠実なだけの話である。

しかも、それらは、マンガに似ている。いや、それがマンガなのかもしれない。

手塚治虫の場合、海賊は海賊らしくまとめられている。ジャングルはジャングルらしいし、汽船は汽船らしい

もちろん事実は調べただろうが、ほとんどこのらしさが基準になって、できあがっている点がおもしろい。

―西上ハルオ「『新宝島』研究」より

つまり、手塚治虫は、いかに「それらしい絵」を描くかということに優れていたわけです。つまり、いわゆる「マンガ記号論」としてのマンガが上手かったというわけですね。

―記号論については「マンガの描き方|「マンガ記号論」って何なの?描くときにどう意識したらいいの?」を参照

たとえば、「焦っている表情」を描くためにどうするか?

焦っているときの人間の表情をデッサンして描くのでもなく、

リアルな表情をデフォルメするわけでもなく、

顔の近くにただ「汗マーク」を描く・・・というような描きかたのことですね。

記号的に、「それらしく」描く能力に優れていれば、マンガの絵を上手く描けるわけです。

記号化する能力を高めるには

記号化して描く能力といっても、記号を一から創作しなくても大丈夫です。

記号を考える作業は、手塚治虫や、その後の多くのマンガ家たちが既にやってくれました。

現代の私たちは、そういう先人たちのマンガの描き方をどんどん引用しちゃえばいいわけです。そのためには、色々な作品を読みまくることですね。

「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博先生も、表情の描き方について、似たようなことをおっしゃっている様です。村田雄一版「ヘタッピマンガ研究所R」からの引用です。

村田雄一「ヘタッピマンガ研究所R」より―冨樫流表情の描き方

村田雄一「ヘタッピマンガ研究所R」より―冨樫流表情の描き方

ヘタッピマンガ研究所R (ジャンプコミックスDIGITAL)

今まで読んできたマンガの「脳内ストック」から持ってくる…まさしく、「すでにある記号を持ってくる」ってやつですね。

いかにたくさんマンガを読み、マンガ的な記号を「ストック」し、いかに使うか!これにつきると思います。

どんな記号を、どこでどう使うかという技術…そういう技術のことを、とりあえず「記号化する能力」といってみました。

造形する力

「見ないで描く」能力

「かくかくしかじか」にもどりますが、前述のシーンのすぐ後に、こんなセリフがあります。

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンでは造形する力は身につかない

東村アキコ「かくかくしかじか」より―デッサンは造形する力が身につかない

デッサンをしまくれば「ただ『見て』描く」能力は身につきますが、「自分のなかで形を構築する絵」が描けるようにはならないようですね。

ここからわかるのは、マンガに必要なのは、「自分の中で形を構築して」描く…つまり「見なくても描ける能力」だということですね。

…そういう能力を「造形する能力」といってみました。

たとえば、空想のメカとか生き物とかを、スラスラ上手く描けちゃう能力…時々そういう人がいますよね…宮崎駿とか。

他にも、キャラのポーズとか、服のしわとかを、資料を見ないで描く時に必要な能力ですね。

「造形する能力」を身につけるには

ではどうやって「造形する能力」を身に着ければいいのか?

ファンタジーキャラとかSFメカ等、「実在しないもの」の造形となると、ほとんど才能でやるしかないと思いますが、

少なくとも、「実在するもの」を見ないで描くことぐらいは、訓練でなんとかなります。

たとえば、人間の体を見ないで描くためには、骨格とか、筋肉とか、各パーツの大きさの比率などを勉強すればいい。Pixivでよくあるやつですね。

まとめ

マンガやイラストの世界で「画力を上げる」ために必要な、2つの能力として、今回取り上げたのは次の2つでした。

  • 記号化する能力:マンガ的な記号表現を引用してくる能力
  • 造形する能力:何も見ないで描く能力

 

今回の参考文献一覧

かくかくしかじか 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

アトムの命題 手塚治虫と戦後まんがの主題 (角川文庫)

 

ヘタッピマンガ研究所R (ジャンプコミックスDIGITAL)

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