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ストーリー作りに行きづまることってあると思います。そういう時は、適切な「思考法」を使えば解決するかもしれません。この記事では、ストーリーを作るときの基本となる2つの思考法である「演繹法」(えんえきほう)と「帰納法」についてまとめています。
帰納法と演繹法とは
帰納法と演繹法(えんえきほう)は、推論の方法の一種ですから、ストーリーの作り方の理論として作られたものではありません。でもストーリーを考える上で、とても重要な考え方です。
まず、一般的な定義での帰納法と演繹法についてまとめます。
帰納法とは
帰納法とは「結果から逆算して考える」思考法です。たとえば計算式の場合だと、「3」という答えになる式には、どんなものがあるのかを考えていくということで、「3=?」という穴埋め問題のように考えます。
当てはまる式は1つじゃない場合がほとんどですね。
演繹法とは
演繹法は帰納法の逆で、「結果に到達するために、順番に考えていく」思考法です。普通に日本の計算ドリルのようにして「1+2=?」という穴埋め問題のように考えます。
与えられた式によって答えは1つに絞られますが、どんな式がくるかによって答えが変わるわけです。
ストーリー作りに応用すると?
では帰納法と演繹法をストーリーの作り方にあてはめると、どうなるのでしょうか?ストーリーを作るときの、帰納法と演繹法の使い方を解説します。
帰納法:キャラを操る
帰納法でストーリーを作る場合は、作者が主導権を握って、「キャラを操る」ような作り方になります。
「こんなオチにしたい」「こんなシーンを作りたい」など、作者が持っていきたい方向に持っていくためにはどうすればいいか?と考える作り方です。
どうすればいいか?という答えは1つじゃないので、選択肢が多く、けっこう難しい作り方でもあります。
初めに「オチ」ありきで考えたり、「絵面やシーンの美しさ重視」で作ったりするのは、よくあるテクニックですね。その点は、以下の記事で解説しています。
印象的なシーンの作り方|ティム・バートン、庵野秀明、宮崎駿の共通点
演繹法:キャラにゆだねる
演繹法は、逆に「キャラにゆだねる」作り方です。手塚治虫著「手塚治虫マンガの描き方」によると、ストーリー作りの演繹法とは以下のとおりです。
登場人物と舞台さえ考えたら、あとは作者にもどうなるかわからないという形で話がすすむ。
「登場人物」と「舞台」(設定)という、ストーリーを動かす原因を先に作って、ストーリーをそこから導き出すということですね。
キャラや設定に、ストーリーの展開をゆだねるので「作者にもどうなるかわからない」というわけです。
演繹法だと、「このキャラならこう行動するはず」「この状況なら、人はこういう行動に出る」という風に、キャラや設定によって、ストーリーの方向性が、ある程度決まります。
帰納法のメリット・デメリット
メリット:意外な展開を作りやすい
帰納法は、エンディングなどから逆算して、「どうやってそのエンディングにいくのか」を自由に考えられます。そのため、意外なストーリー展開を作りやすいといわれています。
たとえば、意外な展開が必要な「ミステリー」を作る場合、トリックなどを先に考えたうえで、そのトリック・犯人がわからないような形で話の展開を考えていくのが一般的です。つまり帰納法ですね。
NHKの浦沢直樹の漫勉「浦沢直樹」で、浦沢先生のストーリーの作り方について、ご本人が以下のように説明しています。
(物語は)ゼロから積み上げるんじゃないです。7とか8とか、10のところを想像して、「一体どうしてそうなるんだろう」と想像する。ゼロから積み上げていくと、安定した積み木の積み上げ方になる(が、面白味がなくなる)。最初にドンとあると、すごくいびつな(面白い)ものが作れる。
明らかに「帰納法」のことですね。
「いびつな(面白い)もの」が作れるとのことですが、「安定」の逆なので、ありきたりじゃない、意外性のあるストーリーが作れるということですね。
デメリット:無理が生じがち
帰納法は、作者が持っていきたい方向に無理やり話を展開させることになるので、話に無理が生じて、いわゆる「破綻」を起こしやすいです。
「ここで普通こんなことするか?」というような展開になったり、「キャラが崩壊している」という感じになったりしやすくなります。
たとえば、質の低いミステリー作品だと、「トリックはわかったけど、その程度の動機で殺さないでしょ」「そもそもそんなトリックを使う必要がない」という感じになることがありますね。
トリックありきで、そのためにキャラクターを操って話を展開するので、キャラクターの動機に無理が生じやすいわけです。
演繹法のメリット・デメリット
メリット:無理なく作りやすい
演繹法は、主人公の気持ちの自然な流れに従い、設定上無理のない方向に自然に展開させるので、帰納法よりも「無理のない」話にしやすくなります。
いわゆる「破綻」を起こしにくいというわけです。
また「主人公の性格上、次はこういう行動にでるはず」ということが自然にわかるので、次の展開をどうすればいいか、悩むことが少なくなります。
キャラや設定さえ固まっていれば次の展開は決まってくるというわけです。前述の「計算式」で例えると、式が決まっていれば答えは1つということですね。
デメリット:ありきたりな展開になりがち
演繹法の場合は、意外な展開を作るのが難しくなります。「次の展開はこうなって、次にこうなって…」と順番に考えるだけですから、注意しないとありがちな展開になりやすいです。
「読者の予想を裏切れ!」とよくいわれますが、演繹法で意外な展開を考えるのは結構なセンスが求められるわけですね。
両方使ったほうがいい
ほとんどの場合、1つの作品を作るときに両方の思考法を使っているはずです。
話の全体は演繹法で考えていても、一部のシーンは帰納法で作るなど、無意識か意識してか、使い分けていることがほとんどです。
2つの方法を、意識的に使い分けることができれば理想ですね。自分の好きな時に、道具を持ち替えるみたいにして、2つの思考法を自由に切り替えて使えると、効率良くストーリーを作れるでしょう。
どうやって使い分けたらいいのかという例を、次の項目から紹介しています。
どんなときに「帰納法」を使う?
ミステリーなどを書くとき
ほとんどのミステリーは、まず「トリック」から考えていきますから、帰納法で書かれているといえます。
ミステリーは「人が殺された」などの結果に対して「なぜ?」「だれが?」と考えていくわけですから、そもそも話の展開自体が帰納法ですね。
帰納法を使えば、「まさかこの人が犯人とは思わなかった!やられた!」という、意外な展開も書きやすいでしょう。
ストーリーの微調整・修正
ストーリーを修正したり微調整したりするときなどにも、帰納法は活躍します。
「もっとハッピーエンド寄りにしよう」「もうちょっとキャラを立たせよう」「ここで一回挫折させよう」など、直したほうがいい点に気づいたときです。
「じゃあどう直したらそうなるか」と考えるわけですから「帰納法」ですね。話の全体を演繹法で作っているとしても、修正するときは帰納法を使うことが多いでしょう。
ただし帰納法は、前述のとおり「破綻しやすい」というデメリットがありますから、修正しすぎて話が変にならないように注意する必要があります。
どんなときに「演繹法」を使う?
キャラを立たせたい場合
キャラ重視の傾向があるマンガ業界の主流は、「演繹法」だと思います。
せっかくキャラクターを作りこんでいるのに、「帰納法」ばかり使って、キャラを一定の型にはめこんで行動させても、キャラが崩壊したり、生かせなかったり…いろいろ無理がでてくるでしょう。
キャラが破綻しないよう、キャラの魅力を表現するには「演繹法」が適しているといえます。
修正しすぎて煮詰まってきたとき
ストーリーの推敲・修正を繰り返していると、「もう何が何だかわからなくなってきた!」「次にどう展開させたらいいのか分からない!」と煮詰まってくることがあると思います。
その場合、「演繹法」に立ち返って、この「キャラならどういう行動に出るはずか?」と考えてみるといいかもしれません。
そうすると、ストーリーの方向性が見えてきて、「このキャラなら、こうするに決まってるじゃん!」ということに気が付くかもしれません。
煮詰まったときや、スランプに陥ったときに「演繹法」に切り替えるというもの1つの方法です。
まとめ
ストーリー作りにおける帰納法と演繹法とは、以下のとおりです。
- 帰納法:キャラを操る作り方(作者が主導権)
- 演繹法:キャラにゆだねる作り方(キャラが主導権)