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週刊連載を持つマンガ家は、毎週面白いストーリーを考えるわけですが、本当にすごいことですよね!どうやったらそんなことができるのでしょうか?1つの方法は、ストーリーの王道パターンを利用するということです。色々な資料を参考にまとめました。
王道パターンを利用するとは?
王道パターンを利用してストーリーを作るというのは、名作のストーリー構造など、ストーリーのお手本となるテンプレのような構造パターンを利用してお話を作るということです。
盗作や、ありきたりな展開ということではなく、王道のストーリー構造を利用して、そこに新しいキャラクターや設定をはめ込み、全く新しい作品を作り上げます。
それは盗作ではないのか
ストーリー構造を借りるだけなら盗作とはいえません。それを言い出したら世の中のほとんどの作品は盗作になってしまいます。
ストーリー構造(骨組み)について、校條 剛著『スーパー編集長のシステム小説術』で以下のように解説されています。
ストーリーを骨組みだけにすると、特別の個性はどこにも見られません。…(中略)…ストーリーの基本ラインではオリジナリティを追求する必要はないということなのです。読者がこの世で初めて目にするラインというものは存在しないと言ってもいいくらいです。
「ストーリーの基本ライン」つまりストーリーの構造パターンは、好きな作品や名作から借りてきても問題ないということですね。むしろストーリーの骨組みを強くするために大切でしょう。
「ストーリーの基本ラインではオリジナリティを追求する必要はない」とのことですが、オリジナリティは、キャラクターデザインや設定、セリフ回しなどの細部に宿るといえるでしょう。
ストーリーの構造パターンは同じでも、まったく違うキャラクターや設定があれば、誰から見ても盗作とはいえなくなります。逆にキャラクターデザインや設定がそっくりで、ストーリー構造を変えただけだと盗作になる可能性が高いですね。
王道パターンを使うメリット
面白いストーリーを作るために、先人たちが開発した面白いパターンの力を借りないというのは、本当にもったいないことです。王道パターンを使うことによるメリットとは何でしょうか?
どんどんストーリーが作れる
ストーリーを作ろうとしても、途中で挫折して最後まで作れない、完成させられないというのは、よくある問題です。
でも王道パターンを利用してストーリーを作ることで、ストーリーを作るコツをつかみ、どんどん作れるようになると言われています。この理論の第一人者である大塚英志氏によると、以下のとおりです。
まず『どろろ』を「盗作」して「英雄神話」の構造を体験したら、次は「村上龍」を盗作してみましょう。「みるみる物語が作れる」ようになる自分にあなたはちょっと驚くはずです。
出典:大塚英志著『物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン』
ここでいう「盗作」とは、法律上の盗作ということではないことに注意してください。大塚氏の言う「盗作」とは、お手本となる作品のストーリーの構造パターンを利用して、新たな作品を作ることです。
つまり王道パターンを利用することで、「みるみる物語が作れる」ようになる。ストーリーを作る技術やスピードが向上するということですね。
ストーリー展開に悩んだ時のヒントになる
王道パターンを参考にすることで、ストーリー展開を考える上でのヒントを得られることがあります。
ハリウッドの脚本理論の権威であるブレイク・スナイダー氏の解説によると以下のとおりです。
とにかく、自分の作品がどのジャンルに属すのかを知ることは、脚本家にとってとても重要だ。なぜなら書いている途中で道を見失うことはよくあることで、そんなときにはスティーヴン・スピルバーグでも私でも、同じジャンルの作品を参考にし、プロットや登場人物からヒントをもらうからだ。
ここでいう「自分の作品がどのジャンルに属すのか」というのは、自分の作品がどの王道パターンに属すのかということです。
つまり、ストーリー展開に悩んだとき、同じ王道パターンに従っている他の作品を参考にすると、良いヒントをもらえるということですね。
マンガやアニメの王道パターンの例
ここでは、マンガやアニメの王道パターンをいくつかまとめてみました。
どこか・何かを目指す(探す)
どこか目標となる場所を目指す話は、マンガやアニメでよくありますね。
例えば『宇宙戦艦ヤマト』はイスカンダルを目指す話で、『ワンピース』は今のところラフテルを目指す話です。
あるいは『ドラゴンボール』のようにアイテムを探す話や、『母を訪ねて三千里』のように誰かを探すという話も、ストーリー構造としては同じといえるでしょう。スポーツモノで、優勝を目指す!というストーリーも同じです。
目標となる場所や物、人物に向かって進んでいくという話ですね。
出会ったことの化学反応
マンガやアニメはキャラクターを前面に出すものですから、キャラクター同士が出会うことで、どんな化学反応があるのか?という話も王道パターンです。
恋愛モノは基本的にこの構造ですし、『ドラえもん』などの居候(いそうろう)モノもそうですね。
謎の解明
謎の解明というとミステリーのパターンですが、ミステリーに限らず色々な作品で使われるパターンです。
アニメ版『攻殻機動隊』はSFですが基本的にこのパターンですし、マンガ『動物のお医者さん』は日常モノですが、小さな謎を解明していく話になっています。
超王道のパターンは「行って帰る」話
ほとんどの作品に共通する「超王道」のパターンとして有名なのが「行って帰る」話です。
その点は、『指輪物語』や『ナルニア国物語』の翻訳者として有名な、児童文学の権威でもある瀬田貞二氏が以下のように解説しています。
小さい子どもたちは、「行って帰る」という構造をもったお話にいちばん満足を覚えるというのがぼくの仮説なんです。じっさい、昔話にしても、創作童話にしても、お話を聞く子どもたちの様子を見ていると、そうなんですね。
(中略)
昔話の世界には、この構造をもったものが相当たくさん含まれていることが発見できます。
―出典:瀬田貞二著『幼い子の文学』
「行って帰る」話とは
「行って帰る話」とは、そのままの意味で「どこかに出かけて行って、帰ってくる」ということですが、「どこか」というのは場所とは限りません。
例えば「バスケの世界に足を踏み入れる」というのも、どこかに出かけるということです。前述の「どこか・何かを目指す(探す)」というパターンは、結局のところ、この「行って帰る」構造に従っていますね。
「帰る」というのは、実際に元の場所の帰ってくるとは限りません。大きいくくりで考えると「物語のスタート・原点に立ち返り、話をまとめる」というようなことです。
最初の頃の自分と比べたら成長したと感じるとか、あるいは元いた所には帰らないことにするとか、元に戻らないというオチでも「帰る」に含まれます。
ですからほとんどの作品がこの「行って帰る」話の構造をもっていると言えますね。
起承転結や三幕構成だって王道パターン
ある意味、起承転結や三幕構成も、ストーリーを作るための王道パターンの一種と言えるでしょう。こう考えると、王道パターンには何段階かのレベルがあることがわかります。
例えば、大きいくくりでは「行って帰る」話というパターンを使い、中ぐらいのくくりでは「起承転結」のパターンにして、具体的な小さいくくりでは「ドラゴンボールっぽい」パターンで、何かを探す話にするという具合です。
実際に多くのクリエーターは、様々な王道パターンを参考にして、いくつか組み合わせてストーリーを作っていく場合が多いでしょう。
起承転結や三幕構成について、具体的には別の記事で解説していますので参考にしてみてください。
ストーリーの起承転結とは?それぞれの意味を解説!三幕構成と比較してまとめてみた
まとめ
ストーリーの王道パターンを利用することは、どんどんストーリーを量産できるスキルが身につくことや、行き詰まったときのヒントになるなど、色々なメリットがあります。
自分の好きな作品のパターンを分析して覚えておいたり、最近観た映画のパターンを記憶してくことで、どんどん王道パターンが蓄積されていきます。そうすることで、ストーリー作りがどんどん上手くなるはずです。
この記事の参考文献
大塚英志著『物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン』(星海社)