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今までアナログで描いてきた人など「初めてデジタルでマンガを描く」場合、どうやって始めたらよいのでしょうか。デジタル作画の基本の考え方から、道具・ソフトの選び方、基本的な描き方の手順まで、初心者に必要な知識を徹底解説します。
デジタルでマンガを描くメリットは?
現代では、アナログだけでマンガを描いている人は少数派かもしれません。若者だけでなく、多くの大御所マンガ家達の中にも、デジタルを導入する人が増えています。
なぜデジタルを導入するのでしょうか?メリットは何でしょうか?詳しくは以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。
デジタルならではの表現ができる
デジタルでマンガを描く場合、デジタル作画用のソフトを使って、アナログでは不可能な表現が可能です。
アナログと比べて「表現の幅が広がる」といってもいいでしょう。例えば、以下の点で、アナログには不可能な表現ができます。
- 「ブレ」の表現:アナログでは難しいスピード感を出せる
- 「ぼかし」の表現:映像のような演出ができる
作業の効率化
デジタルでの作画は、慣れないうちは余計な時間がかかるかもしれませんが、慣れればかなりの時間短縮になり、作業効率がアップします。
例えば、デジタルでは以下の作業が簡単です。
- 修正・元に戻す作業
- コピ&ペースト
- トーン貼り、ベタ塗り作業
- ワク線を描く作業
- 背景を描く作業
2種類ある!デジタルでマンガを描く方法
デジタルでマンガを描くといっても、大きく分けて2つの方法があります。「デジタルとアナログの併用」と「完全デジタル」の2つです。それぞれ詳しく紹介します。
デジタルとアナログの併用
デジタル作画といっても「全てデジタル」にする必要はありません。デジタルとアナログを「併用」しているプロ作家も多くいます。
併用の中でも、以下の2種類の方法があります。
併用の方法1:アナログで下描き
下描きや線画はアナログで描いて、ペン入れや仕上げはデジタルで作画するという方法です。
ずっと紙にお絵描きしてきた人は、ペンタブレットで「線を引く」のに違和感があることがあるので、「大事な線は紙に描きたい」ということで、紙とデジタルを併用するわけですね。
紙に描いた線をスキャナーでPCに取り込み、マンガ用のソフトで、ベタやトーンなどの仕上げをします。
どの段階まで紙に描くは人ぞれぞれで、「下描き」まで紙という人もいれば、「ペン入れ」まで紙という人もいます。
併用の方法2:印刷して描き込む
今度は逆に、PCの中にある画像を原稿用紙に印刷して、アナログの線を描き込むという手法もあります。
これは特にマンガの「背景」を描くときに使われる手法です。
マンガ用のソフトの中には、写真をマンガ風の背景に加工できるものがありますが、そのように「自動で加工」したものは、自分のイメージ通りではないことがあります。
そこで「自動で加工」した画像を紙に印刷して、ペンで描き込みを入れ、自分のタッチを加えるわけです。プロでもこの手法を使っている人がいます。背景の「下描き」の手間が省けるというわけですね。
描き込みを入れたら、またスキャンしてPCで仕上げてもOKです。
写真を利用して、マンガの背景を作るテクニックや事例について詳しくは、以下の記事を参照してください。
完全デジタル
ネームから下描き、ペン入れ、仕上げまで全てPC上でやる「完全デジタル作画」の人もいます。
今では、デジタルデータで原稿を納品することもあるため、便利な方法です。スキャンするなどの手間も省けるので、効率的に仕上げられます。
ペンタブレットの操作に慣れれば、デジタルでも「下描き」や「ペン入れ」などの繊細な作画が、できないことはありません。特に「液タブ」を使えば十分に可能です。
ペンタブレットの種類について詳しくは後述しています。
デジタルでマンガを描くための道具
では実際にデジタルでマンガを描くために、どんな道具をそろえればよいのでしょうか。以下の一覧表にまとめました。
各リンクから、その道具の選び方に関する詳しい解説に移動できます。
必須の道具 | マンガ用のソフト |
スペックの適したPC | |
ペンタブレット | |
任意の道具 | 大きめのモニター |
スキャナー | |
プリンター |
マンガ用のソフト
イラストを描くためのソフトや画像編集のためのソフトは沢山ありますが、「マンガ用」となると、数が限られています。
マンガ用ではないソフトでも、描けないことはありませんが、枠線やペン入れなどに必要な機能がなく、かなりの手間がかかってしまうので、普通は使用しません。
2020年現在のマンガ用ソフトは、以下の3つだけといってもいいでしょう。
- CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)
- MediBang Paint(メディバンペイント)
- ibisPaint(アイビスペイント)
ほとんどの人は「CLIP STUDIO PAINT」を使っています。有料ですが、一括払いの5,000円(税込)~で、お手頃価格です。
お金をかけたくない場合は、無料の「MediBang Paint」か「ibisPaint」でも、ある程度は使えますが、ペン入れの機能などが弱く、本格的な作画はできません。
マンガ用のソフトについて詳しくは、以下の記事にまとめていますので、参照してください。
デジタルのマンガ制作におすすめのソフト|この4つから選ぶのが基本!
ペンタブレット
まずは「板タブ」か「液タブ」かを決めましょう。それによって、後述するPCの選び方も変わってくるからです。
液タブとPCが一体化した「タブレットPC」という手もあります。
板タブ(ペンタブレット)
「板タブ」とは、ペンで描き込む「板」と、イラストが表示される「モニター」が別々になっているタイプのペンタブレットです。単に「ペンタブレット」と呼ばれることもあります。
価格は、後述する「液タブ」と比べてリーズナブルで、相場は9,000~5万円程度です。
「下描き」や「ペン入れ」などの繊細な作業をしないなら、これでも十分便利に使えるでしょう。アナログと併用する人にもおすすめです。
液タブ(液晶タブレット)
液タブ(液晶タブレット)とは、ペンで描き込む「板」と、イラストが表示される「モニター」が一体化したタイプです。
画面に直接描き込めるので、直感的なお絵描きができます。デジタルでマンガやイラストを描く場合、できればあった方が便利なアイテムです。
価格は少し値が張って、13万~30万円ほどしますが、デジタルでマンガやイラストを描く場合、予算が許せば、あった方が便利なアイテムです。
最近では中国製で格安の液タブも出回ってきており、5万円程度で購入することも可能です。ただし性能が良くない製品もあるので、よく選ばなければいけません。
以下の記事に、格安の液タブについてまとめているので、参考にしてみてください。
タブレットPC(iPadなど)
iPadの発売以後、「タブレットPCで絵を描く」という、第3の選択肢ができました。
液タブと同じように、画面に直接描き込めますが、違いは「PCとペンタブレットが一体化」していることです。液タブはPCに接続しないと使えませんが、タブレットPCは、それ単体で使えます。
持ち運びがしやすいため、カフェなど外で作業したい人には大変便利ですね。
ただし性能が低いと、ペンの反応や追従が悪くなり、ペンタブレットとしての性能も悪くなります。基本的に、かなりスペックの高いものでないと、使い物にならないことが多いです。
液タブとタブレットPCの違いについて詳しくは、以下の記事を参照してください。
スペックの適したPC
本格的にマンガを描くなら、それなりに性能の高いPCが必要です。
PCスペックを間違えると、作業効率が、かなり悪くなってしまいます。以下に挙げる2つのスペックに注目して、適したPCを選ぶようにしましょう。
大容量のメモリ
「解像度の大きい画像」を扱うには、「大容量のメモリ」が必要です。最低でも「8GB」は必要でしょう。
白黒マンガは特に、トーンを貼る関係で「解像度の大きい画像」を扱うので、メモリの容量が小さいと、処理しきれなくなる可能性があります。
高性能のCPUやGPU
PCの「処理能力」が低いと、マンガ用のソフトの機能がうまく動作しなかったり、処理に時間がかかったりしてしまいます。
処理能力に関係するのが「CPU」です。マンガ用のPCには、インテルの「Core i7」以上が搭載されたものをおすすめします。「Core i5」「Core i3」と数字が少なくなるにつれて、処理性能が低くなるということを参考にしてください。
ただCPUの性能に比例してお値段がぐっと上がりますので、安いPCから始めて、不満を感じたらグレードアップするというのもありでしょう。
PCのスペックや購入方法について、詳しくは以下の記事も参考にしてください。
デジタルでマンガを描くために必要なPCスペックは?おすすめを紹介!
大きめのモニター
デジタル作画においては、画像を映し出す「モニターの性能」も重要です。カラー原稿を描く場合は特に、モニターの性能が悪いと、作品の色合いなどに影響することもあります。
「液タブ」の場合は、液タブ自体がモニターの役割を果たすので、別のモニターは必須ではありませんが、あると「マンガを描く以外」の作業がしやすくなるので、何かと便利でしょう。
マンガ用のモニターを選ぶ上で、性能に関する重要なポイントは以下のとおりです。
- 画面が大きいこと
- 発色がいいこと
- 視野角が広いこと
- 反射しないこと(ノングレア)
「画面が大きい」方が、細部を描き込みやすく、作業がしやすくなります。小さい画面は、細かい部分が描きにくいので、「拡大縮小」して描く頻度が多くなって面倒です。そのせいで作業効率が悪くなります。
モニターの選び方について、詳しくは以下の記事を参照してください。
アナログと併用するならスキャナーが必要
紙に描いた線をPCに取り込むなど、アナログとデジタルを併用してマンガを描くなら、スキャナーが必須です。
スキャナーにはいくつかの種類がありますが、マンガ用としては、原稿を寝かせるタイプの「フラットベッドスキャナー」がおすすめです。
マンガ用のスキャナーの選び方について、詳しくは以下の記事を参照してください。
イラスト・マンガ制作におすすめのスキャナー7選|種類と選び方
プリンターがあれば自由度UP
前述の「印刷して描き込む」というテクニックを使う場合は、プリンターが必要です。
原稿を「紙で納品」する場合にも使います。プロ用の大きい「B4」サイズの原稿用紙を使うなら、プリンターがそのサイズに対応しているかどうか確認しましょう。
紙の原稿で納品するのではなく、「PC→紙→PC」と再スキャンして、最終的にデジタルデータで納品するなら、プリンターのサイズはあまり関係ありません。再スキャンしたときに、画像のサイズを自由に変えられるからです。
ただ、大きい紙に印刷した方が描きやすいとか、きれいに印刷できるとか、こだわりがあれば、なるべく大きい用紙に対応したプリンターを選びましょう。
デジタルでマンガを描く手順
では、実際にデジタルでマンガを描く基本手順を確認しましょう。基本的にはアナログと同じ手順ですが、デジタルならではの注意点があります。
基本のソフトである「CLIP STUDIO PAINT」(クリスタ)を例に見てみましょう。
用紙サイズを選ぶ
描き始める前に、まずは「用紙サイズ」を決める必要がありますが、「どのサイズにすればいいのか」と悩むかもしれません。
同人誌は「A4」、プロ用の原稿は「B4」が一般的ですが、納品先や新人賞の規定などで決まっていれば、それに従いましょう。
クリスタの場合は、基本的なテンプレートとなる用紙があらかじめ用意されているので、その中から選ぶだけでOKです。用紙を選ぶ操作方法は、後で紹介する動画をチェックすると、分かると思います。
印刷する場合は、用紙サイズとは別に、「dpi」という解像度も設定する必要があります。
これは、印刷する際に、「どの程度ドットを細かくするか」を決めるもので、数値が高いほどドットが細かく印刷されて、なめらかになります。
カラー原稿なら dpi は「350」白黒なら「600」が一般的です。白黒マンガは、トーンを細かくきれいに印刷する必要があるため、dpi を高くする必要があります。
解像度を高くしすぎると、ドットの数が増える分、データ容量が大きくなりすぎてしまうので、適度な数値にしましょう。dpi「1200」も可能ですが、データ量がかなり大きくなるので、あまり使用されません。
下描き
デジタルでも、アナログのマンガと同じように、ペン入れのための「下描き」をします。
大まかな「コマ割りの下描き」を描いて、そこに「キャラクターの下描き」をするという流れです。
アナログとは違って、色を自由に変えられるので、「下描きは水色」など、分かりやすくなるように色分けする人もいます。
操作方法については、以下のワコム公式動画で、分かりやすく解説されているので参考にしてください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
ちなみに、ほとんどのデジタル作画ソフトには「レイヤー」という機能があって、「下描きの線」と「ペン入れの線」を別々に管理できます。
下描き線の上にペンの線を描き込んでも、下描きの線に上書きされないようにできるのです。詳しくは以下の記事を参照してください。
初心者はここから!デジタルイラストの基礎知識「描き方」「道具」
枠線を引く
アナログで「ワク線のペン入れ」をする場合、まっすぐで平行な線を引くために気を付けないといけませんが、デジタルなら、ワンタッチで簡単に完了します。
大きな四角を分割していく感覚で、カチカチとクリックするだけの簡単操作です。
いわゆる「タチキリ」などの特殊なコマも、専用の機能があるのですぐに作れます。詳しくは以下の動画を参照してください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
吹き出し
「吹き出し」も、あらかじめ用意された専用の機能で、簡単に描けるようになっています。
吹き出しの形は「楕円」だけでなく、「フリーハンド」で自由な形にすることも可能です。
吹き出しのセリフを、誰が話しているかを示す、いわゆる「しっぽ」を付けるのも、ワンタッチの簡単操作で完了します。以下の動画を参照してください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
ペン入れ
ペン入れ作業は、普通にアナログで描くように線を引きます。
画面に表示する「原稿の角度」を変えられるので、アナログでよくある「紙を回しながら描く」というテクニックもOK。
デジタルならではの描き方として、「原稿の左右を反転させて」ペン入れすることも可能です。左右を入れ替えて、鏡状態に表示しながら描けます。
左右反転を使う場面は、例えば、「右向きの顔の方が描きやすい」などの場合ですね。アナログでいうと、裏からペン入れしているのにちゃんと表にもペン入れされているような感じなので、デジタルならではのテクニックです。
デジタルでペン入れをする場合、普通は「ペン入れ用のレイヤー」を作って、下描きやワク線とは別に管理します。
詳しい操作方法については、以下の動画を参照してください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
背景を描く
デジタルで背景を描く方法として、「普通に描き込む」こともできますが、「写真を活用する」というテクニックもあります。
ソフトの専用機能を使って、写真をマンガの背景風に「自動的に加工」し、それをそのまま貼り付けたり、あるいはそれを「背景の下描き」として、その上から手を加えたりして「写真を活用する」わけです。
いかにも自動っぽくて不自然な感じにならないか心配かもしれませんが、最近のソフトは高性能なので、十分プロでも通用するような自然な感じに加工できます。実際、多くのプロがこのテクニックを使っています。
写真を背景に加工する方法について詳しくは、以下の記事を参照してください。
「CLIP STUDIO PAINT EX」(クリスタEX)で写真を白黒マンガの背景に加工する方法
ベタやトーン
デジタルの場合、ベタ塗りは、まさに「ワンクリック」で、一瞬で完了します。
髪の毛のツヤを表現する、いわゆる「ツヤベタ」を塗る場合は、筆ペンで塗るような感覚で、アナログと同じように描くこともできるので、細部のディテール表現も可能です。
クリスタの場合は、はみ出しても「自動で消す」機能があるので、安心して思いっきり塗れます。
ベタについても、「ベタ用のレイヤー」を作って別に管理するのが一般的です。詳しい操作については、以下の動画を参照してください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
アナログのトーンは、カッターで切ったりなどの作業が必要で、特殊なテクニックが必要ですが、デジタルの場合は、「ベタを塗るのと同じ感覚」です。
ベタと同じように「ワンクリック」で一気に貼ることもできますし、筆ペンのようにトーンを「塗る」ような操作もできます。
トーンの「濃さ」や「種類」を自由に変えられるので、何種類ものトーンを買ってストックしておく必要から解放されますね。ただし、印刷所の規定に合ったトーンを使うように注意しましょう。
トーンもレイヤーを分けで管理します。詳しい操作については、以下の動画を参照してください。
使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT
ちなみに上記の動画では、「黒で塗ったところにトーンを貼れる」と説明していますが、これはいわゆる「レイヤーマスク」の考え方です。レイヤーマスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Photoshopの使い方|「レイヤーマスク」とは―しくみ・使い方。レイヤーの一部だけを表示させたい時に便利!
まとめ
デジタルでマンガを描く方法は、大きく分けて以下の2つです
- デジタルとアナログを併用する
- デジタルだけで描く
どちらにするかは、実際にやってみないと決められないかもしれませんね。
デジタルでマンガを描き始めるために「必須」の道具は以下の3つです。
- マンガ用の機能がある作画ソフト
- ペンタブレット
- スペックの適したPC
ペンタブレットとして「板タブ」を選んだ場合、「モニター」も必要です。そしてデジタルとアナログを併用する場合は、以下のアイテムもそろえましょう。
- フラットベッドスキャナー
- プリンター